私と精市は家が隣で家族ぐるみで仲がいい幼馴染。幼い頃からいつも一緒にいて強引なところも優しいところもテニスに打ち込む姿もずっと見てきた。そんな私が彼を好きになるのに時間はかからず、気づけば毎日精市を想う日々。けど幼馴染という関係を壊したくなくて踏み出せずにいた。

精市は中学に入って急にモテるようになり、友達にも彼が好きだなんて打ち明けることが出来なくなった。精市目当てで私に近づいて来る女の子が多いことを知っていたから。むしろそんな子しかいなかったわけだけど。それを実感したのは高校生になってからだった。中学の卒業式の日に精市に告白され、付き合うことになった私たち。噂は忽ち広がり入学する頃には同級生に知れ渡っていた。そしていつも連んでいた子たちに言われてしまったんだ。幸村くんと付き合ってるあんたと一緒にいても意味がない、と。ああこんなものか、私の存在なんて。所詮精市との橋渡し役でしかなかったのだ。

そして始まった嫌がらせ。覚悟はしていたが毎日下駄箱に入れられる「別れろ」「不釣り合い」「幸村くんを返して」の文字に精神は磨り減るばかりだった。部活で忙しい精市に迷惑をかけるわけにはいかず、耐えて耐えて耐えてきた二年間。けどもう限界。






久しぶりに部活が早く終わり一緒に歩く帰り道。ここ最近ハードな練習らしく疲れているのか精市は一言も話さない。彼の斜め後ろから姿を眺める。今、ここで足を止めたら精市は気づいてくれるのかな。そんなことを考えた瞬間、私の足は歩くことを止めた。少しずつ距離が開いていく。涙で滲む視界。零れる、そう思ったとき精市は止まった。

「なにしてるの?」
「…」
「ふーん、俺を無視するんだ」

くるり、と振り返った精市は眉間にシワを寄せて見るからに不機嫌そのものだった。かつかつ、と靴を鳴らしこっちに近づいて来る。そして私の頬を思いっきり引っ張った。

「ひはひ、ひはひ!はなひへ!」
「辛いなら言えよ!寂しいなら言えよ!今更遠慮する仲じゃないだろ!」

その言葉に引っ込んでいた涙が溢れ出した。精市は手を放すと今度は優しく頬を撫でる。

「俺がなまえを好きなことは絶対に変わらないから。安心してていいよ」

太陽みたいに笑う彼に私も釣られて笑顔になった。




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