フられてしまった。あーあ、結構いい感じだと思ってたんだけど。案外脆いもんなんだなあ。なんか実感湧かなくて涙すらでないや。授業をサボって屋上でぼけーっと寝転んでいたら、錆びた鉄の扉が音を立てて開いた。

「やー、ちゅいでぬーそーが?」
「絶賛しょーしんちゅーってやつですよ、平古場さん」

太陽の光を受けて金髪がキラキラと反射して眩しい。私の心は真っ暗なのになんで空はこんなに明るいんだ。平古場は寝転ぶ私の横に座った。なんとなく体を起こす。

「平古場こそ何しに来たの?」
「サボリだばー」

ふーん、と生返事をして再び寝転がると「なまえこそサボリなんて珍しいさあ」なんて言ってきた。なんだこいつ。人の傷抉りやがってちくしょう。

「傷心中だって言ったでしょ」
「もしかしてフられたかや?」

うっわあ。思いっ切り核心ついてきたよこいつ。しかも笑いながら。え、何?冗談のつもりなわけ?平古場ってこんなに空気読めないやつだっけ。とりあえず乾いた笑いが零れた。

「あははー。そうだよー。ついこないだまでうまく行ってたと思うんだけどなあ。何がダメだったのかさっぱりだよ。実感湧かないし」

私の言葉に平古場は目を見開いてこっちを見てきた。何よ、見るな。なんとなく気まずくなって顔を背けると、急に感じた浮遊感。何時の間にか平古場に担がれていた。こう、米俵みたいに。

「ちょ、なにすんの!?降ろしてよ!」
「静かにしれ。授業中だばー」

降ろせ降ろせとどんなに暴れてもがっちりと腰をホールドしている腕は外れない。諦めて担がれることにした。

しばらくすると潮の匂いが鼻を掠めた。さくさくと砂浜を沈む音がする。ああ、海に来たのか。そういや最近あんまり来てなかったなあ、なんて呑気に考えていた。

「ちばりよー」

だから平古場のその言葉に上手く反応できず、何を、と聞く前に私の体は宙を舞い、そのまま青に飲み込まれた。藻掻けば藻掻くほど水は絡み、耐えきれず口から息を吐く。ごぽ、と塩辛い水が口を支配した。沈み行く身体をどうすることも出来ずに、ただ手だけを伸ばす。すると次の瞬間、ぐいっと重力に逆らい私は海から引き離された。

「っごほ、がっ は、…はっあ、」

水を吐き出し、一気に与えられた酸素にむせる。潮水で染みる目をなんとか開けて状況を確認した。なんで平古場に姫抱っこされてるんだ、私。しかしそんな疑問は一瞬でどうでもよくなった。辺り一面に広がる海。改めてその大きさに呆然とした。

「…なんか、悩んでるのが馬鹿みたいに思えてきちゃった」

この広い世界に私はなんてちっぽけな存在なんだろう。私が泣いて落ち込んだところで何億年前からそうだったように何も変わらず明日は来る。それなら笑って過ごそう。どうせ同じなら楽しんで過ごした方がいい。ありがとう平古場、と言えば「素直ななまえなんて気持ち悪いさあ」なんて言いやがったので力の限り頭を叩いてやった。

ちなみに学校に戻った私たちを待っていたのは木手くんからのお説教。半泣きになりながらゴーヤを食べる平古場を横目に、好物であるそれをパクパク食べていたら木手くんにため息を吐かれた。なんだよ。




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