入部届けに書かれた文字を見ながらにっこにこしてたら謙也が話しかけてきた、なんやねん。

「紙見ながらにやにやすんなや」
「にやにやちゃうわ、にこにこしてんねん!」
「はっ」
「白石ー謙也がウザいー」

たまたま近くにいた白石に文句を言えば「放っときー」と返ってきた。可哀想な謙也ー。あ、白石もこっちきた。

「なにしてん?」
「なんか紙見てにやにやしとんねん」
「にやにやちゃう言うてるやろ!」
「ん?それ入部届けやん」
「せやでー」
「そんなん見てどないしたん」
「ほらほら!これ!ひかりちゃん!!」
「「…は?」」
「マネ希望やろか!?」
「………」
「や、ちょお待ちやなまえ、こいつは、んぐっ!?」

謙也が何か言おうとしたのを白石が手で口を塞いだ、どうせ大したことじゃないだろうからどうでもいいけど。ああ、早くひかりちゃんに会いたいなーっ!テニス部のマネ一人しか居ないから大変だしつまんなかったんだよね。こんなに部活が待ち遠しいのは初めてだ!






……目の前にいるのはドナタ。

「一年の財前光やで」
「…は?なんて」
「ざいぜんひかる」
「………ひかりやないの?」

ぶふっと吹き出す音が聞こえた。謙也あとで絞める。白石の横に並んだ黒髪ピアスくんを見れば彼は少し首を傾げた。……財前光が男だったなんて!!

「……みょうじ先輩どないしはったんですか?」
「気にせんとき」

あー白石知ってたな。絞める、絶対絞めてやる。そうか、謙也が言おうとしたのはこのことか。私アホみたいやん。






「ってことがあったねんな」
「最低っスわ」

ちょ、彼女に最低って酷くない?しかも私先輩なんだけど。しょうがないじゃん、ひかりちゃんだと思ってたんだから!

「ほんまありえへん」
「うっさい。てかそもそも性別欄を書き忘れる方が悪いねん」
「……」
「それにそんな私に告白してきたんはあんたやろー」
「気の迷いや」
「うわー」

光は抱き締めていた腕の力を強めた。苦しい。抜け出そうと動いていたら更に力が強くなった、私を殺す気か!

「しぬ!離せ!」
「先輩、ぜんざい食べ行きません?」
「聞いてんのか!」

ぎゅうぎゅう抱き締められて中身が出そう。ぜんざいどころじゃない。行こう行こうと駄々をこね始めた光に小さく溜め息を吐いて「わかった」と返事をした。そういえば今週ぜんざいを食べに行くのは八回目だ、……ありえない。




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