しばらく泣いていると翔太くんが部屋にいきなり入ってきた。彼は私が泣いているのを見ると「兄貴が女の子泣かせおった!」と階段を駆け下り、それを謙也が追いかけて行った(翔太くんは漫画を借りにきたみたい)。一人で手持ち無沙汰にしていると廊下からぺた、ぺた、という音が聞こえてきて冷や汗が流れる。 「な、なに?」 謙也が半開きにして出て行ったドアを凝視する。ぺた、ぺた、ぺた。近づく音に比例するかのように私の鼓動も大きくなる。そして、ついに、ドアが、 「……っきゃああああ…あ、あ?」 私の悲鳴はしりすぼみになった。その理由は目の前にいるイグアナ。ぺたぺたというのはこの子の足音だったらしい。じっと見つめ合う私たち。悲鳴が聞こえたのか謙也が駆けつけた。 「どないした!?…ん?この子は、」 「いぐっさん!!」 呼びかけと同時にイグアナ、基いぐっさんは私に突進してくる。そして抱き合う私たちにぽかんと口を開ける謙也。いぐっさん!いぐっさん!頭にあるこのハートの模様は間違いなくいぐっさん!でもどうしてここに?はてなを浮かべる私に謙也が「えーと」と声を上げた。 「もしかしてみょうじさんが飼ってるってゆうてた子?」 「あ、うん。なんでこっちにいるんだろう…」 首を傾げていたら謙也が部屋を出て行く。不思議に思っていたが、すぐに戻ってきた。イグアナを抱いて。 「す、スピーディちゃん!」 「うお、こいつの名前まで知ってるんか」 そりゃもう、もちろん存じております。スピーディちゃんを見たいぐっさんは私の腕から抜け出した。オスめ!薄情者!スピーディちゃんも謙也から離れいぐっさんと交流。 「「かわいい…」」 ハモってしまった声に照れくさくなってどちらともなく笑う。二匹はいつの間にか寄り添いながら眠っていた。 |