ああ、そういえばなんて言い訳しよう。トリップしてきた私にこの世界の知り合いなんていないし帰る家もない。カバンも何もかも元の世界なのか私は完全に身一つ。というか元の世界に帰ることは出来るのだろうか?確かに謙也に会えたのは嬉しい、それは間違いない。だけどもう二度とお母さんとお父さんに会えないの?友達にも?いぐっさんにも?そして私が消えた世界は今どうなっているんだろう? 「ちょ、え!?す、すまん!!」 「?」 「な、泣かせるつもりはなかったんや!ほんまにすまん!」 俺、怖い顔してたんかな!?と騒ぐ謙也にようやく自分の頬を流れる冷たいものに気がついた。知らないうちに泣いていたようだ。未だ唸っている謙也に笑みが零れる。全て打ち明けてみようと思った。大丈夫、この人なら、この人なら信じてくれる。これは本当に博打でしかないけど。信じてもらえなかったら私はどこに行くこともできない。涙を拭いて大きく深呼吸をした。 「初めまして、みょうじなまえです。信じてもらえるかはわからないけどこれから話すことは全て事実で、頭を打ったからおかしくなったわけじゃないってことをわかってください」 真剣な空気を感じた謙也は大人しくなり、私と同じように正座をした。もう一度深呼吸をする。 「実は……」 全てを話し終えた。あ、でも流石に謙也のことが好きだっていうのは内緒にしたけど。沈黙が流れる。 「……」 「……」 「………信じられへん」 「…そ、っか」 「っていうのが正直な感想。でも今日会ったばっかやけどみょうじさんが嘘ついてるとも思えへん。てかこんな真剣な目で話してる子を疑えへんわ」 「……え!?」 驚いて謙也を見れば彼は眉を下げて頬をぽりぽりと掻いていた。状況を理解した途端視界が揺らいだ。よかった、信じてくれた。また慌てだす謙也。 「しんじ て、もら えなかったら…っどうし、よって…」 緊張、不安、安堵。様々な感情が混じって涙が止まらない。泣き続ける私に謙也は優しく頭を撫でてくれていた。 |