お風呂に入ったあと医務室で跡部にボールを当てられたところに湿布を貼り、部屋に戻ろうと廊下を歩いていたら途中にあるトレーニングルームに引きずりこまれた。突然のことに対応出来ないでいると降り注ぐ暴力。暗闇に目が慣れていないせいで、相手がどこにいるかもわからず避けることが出来ない。気配からすると一人だけのようだけど。

「っい、あああ!!!」

顔を腕でガードしていると、いきなり無防備だった湿布を貼った足を思い切り踏みつけられた。痛さに思わず叫ぶ。足を庇うように体を丸めれば数度背中を蹴ったあと、相手は舌打ちをしてトレーニングルームを出て行った。今はもう目は暗さに慣れているが、ずっと顔を覆っていたせいで誰なのか確認出来ていない。けど長ズボンの上から的確に負傷した場所を狙ってきたことから跡部だと予想した。

「…う、」

近くにあったトレーニング器具に捕まり、なんとか立ち上がる。歩く度にズキンズキンと痛む足を引きずりながらドアを目指した。あと少しというところで目の前のドアが開き、急に視界が明るくなる。目の前にいる人物が電気を付けたのだ。

「へえ。人って殴られたらこんな色になるんだね」
「…不二くん」

顔に笑顔を貼り付けたまま彼はふふ、と言った。横をすり抜けて出て行こうとしたら肩を押され、バランスを崩し尻餅をつく。キッ、と睨み上げると不二はしゃがみ込んで私と目線を合わせた。

「そうそう、それでいいんだよ。どうせ心の中では不二くんだなんて呼んでないんだろう?」
「…」
「別に彼女…神崎さんだっけ?あの子の嘘に付き合う必要もないんだけどね。その方が僕が楽しいからさ」

にこにこにこ。人当たりのいい穏やかな笑顔でそう言うと「精々頑張ってね」と言い残してトレーニングルームを去って行った。





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