精市のサーブで試合はスタートした。それにしてもラリーが長いため中々試合が進まない。いつ見ても人間技じゃないよなあ、なんて考えながら試合を眺める。あ、精市が決めた。

「30ー15」

そういえば跡部の意識はまだしっかりしたままで五感は奪われていないように見える。そろそろ頃合いだと思うんだけど。再び長いラリーが続く。玉を目で追っていると何故か跡部と目が合った。

「みょうじさん危ない!」

ごっ、と鈍い音と共に足に衝撃。痛さに思わずしゃがみ込み、ボールが飛んできた方向を睨んだ。

「悪りぃな、手が滑った」

全く気持ちの篭っていない謝罪に私ではなく精市が舌打ちした。それが聞こえたのか跡部は眉を顰める。ああもう、勝手に跡部と敵対しないでよ。

「なに、俺には一ポイントぐらい捨てても勝てるってこと?」
「だから手が滑ったって言ってんだろ」
「へえ。あんな玉もまともに返せないぐらい弱くなってたんだね。それとももとから?」
「な…!」

これ私にボール当てたからとかじゃなくてゲームを捨てたことに対しての本気の怒りだ。ピリピリした雰囲気の二人を見つめているとため息を吐いた精市が私の方に顔を向けた。

「みょうじさん、この試合俺の不戦敗にしておいてくれる?例え棄権だとしてもこんな奴に負けたって記録がつくのは嫌だけど、これじゃ練習にもならないからね。あ、俺今から越前と試合するからみょうじさんスコアよろしく」

一息でそこまで言うと精市は真田と手塚の試合をぼけっと眺めていた越前の首根っこを「試合するよボウヤ」と言って掴み、隣のコートへ歩いて行く。苦虫を噛み潰したような顔をしている跡部を尻目に私は彼らのあとを追った。というか精市、越前の前ではボウヤ呼びなんだ。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -