テニス部が手をだしたことが広まってからというもの、所謂『イジメ』といわれるものが表立って行われるようになってきた。暴言暴力は当たり前。ものが捨てられる、壊されるなんてのも日常茶飯事だ。幼稚なことしか浮かばない彼等が笑える。最も今のこの状況は笑えるものではないのだけど。

「……今度は何をしたことになってるの?」
「とぼけんなよ!神崎に水ぶっかけたんだろ!?」
「ほんと懲りねぇよな!!」
「逆に尊敬するぜ」
「なに、もっといじめられたいとか?」
「ドMかよ!」

私を囲む十人弱の生徒たちはぎゃははと下品な笑いを溢す。全くもって不愉快である。殴り飛ばしたい衝動をなんとか抑えた私を誰か誉めてほしい。

「じゃ、始めるか」

それを合図に一気に殴りかかってくる彼等。殴られるという日常には慣れても痛みに慣れることはない。私の体は痣だらけで青や黒に変色して自分でも目を背けたくなるほどだ。

気が済んだのか倒れた私を置いて生徒たちは去っていった。そして新たな人物が私の前に立つ。

「うふふ、いい気味ね、なまえちゃん」

神崎のにやにやとした笑みを見てあの小太りな数学教師を思いだし、嘲笑が溢れる。みるみる顔を歪め始めた彼女は私を何度か蹴りあげたあと、踏みつけて帰って行った。





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