榊が用意したマンションの部屋になんとか辿り着いた。体を見てみればところどころ血が滲んでいる。溜め息を吐き、浴室へ向かった。

蛇口を捻ればお湯が降ってくる。少々熱めのそれは気持ちいい、が

「……い…っ!」

傷に染みる。まあお湯じゃなくても染みるんだけど。こんな状態ではお風呂に漬かることも出来ないのでシャワーだけ浴びることにした。服を着て浴室からでるとインターホンが鳴った。画面を確認すれば侑士たちの姿が。大方心配して急いで来てくれたのだろう、汗だくだ。

「開けたよ」

鍵を開ければドタドタとマンションに入ってくる三人。三分足らずで最上階であるここ、三十階に到着してしまった。玄関のドアを開けてやれば雪崩れ込むように入ってくる。

「なんでそんなに慌てて…え、まさか階段できたの?エレベーターは?」
「なまえ、っが心配や からに、決まっ てるやろ…!」
「エレベーターなん、か待って、られるか!」
「手当て…は、しま した…か?」

息も絶え絶えに言葉を紡ぐ彼等。むしろこっちが大丈夫なのか聞きたい。というかエレベーターでも大差なかったんじゃない?という疑問は胸にしまっておこう。いつまでも玄関にいるのもどうかと思ったからリビングに通すことにした。

ソファに座らせ、お茶を出す。落ち着いたところで侑士が口を開いた。

「……怪我の方はどうなんや?」
「まあ痛いけど我慢出来ない程じゃないから大丈夫」
「救急箱とかねーのか?」
「確かそこの棚の開きにあったと思う」
「俺、とってきますね」

若が立ち上がり、棚に向かう。簡単に見付かったのか、すぐに救急箱を持って戻ってきた。





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