噂が回るのってほんとに早い。今朝のことだっていうのにもう広まってる。

「ちょっと!」
「…なに?」
「テニス部めちゃくちゃにしてどういうつもり!?」
「トロフィーも壊したって話じゃん!」
「跡部くんたちがどれだけ頑張ったと思ってるのよ!!」

教室に入った途端数人の女の子に囲まれた。よく部活を見に来る子たち。ぎゃあぎゃあと大声で叫んでいる。ああ、……めんどくさい。

「聞いてるの!?」
「……やってないことを言われても困る」
「嘘ついてんじゃないわよ!」

バッと一人の女の子が手を振りあげた。私は目を瞑ったが、待てども衝撃は来ない。

「し、宍戸くん!?」

その名前に反応して目を開ければ女の子の手首を掴んでいる亮がいた。

「女は手ぇ上げるもんじゃねえよ。けど俺たちのためにありがとな」
「そんな……」
「席、戻っとけ」

彼女たちは亮の言葉に渋々といったように席に戻って行く。それを見届けた亮はこちらに向き直ると私の耳に口を近付けた。

「俺は俺なりの方法でお前を守る」

小声でそう言った亮は仏頂面で自分の席に戻った。周りからはきっと脅しをかけたように見えただろう。実際はその真逆なのだが。私は緩む顔を悟られないようにするために眉間に皺を寄せておいた。





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