みょうじが部室を出ていってからも部室には重い雰囲気が漂っていた。練習ができるはずもなく今日の朝練はそこで終了させた。俺は素早く制服に着替え、監督がいる音楽室へと足を向ける。

「失礼します」

中に入るとピアノの前に座る監督は、俺に気が付きこちらを見る。なんだ、と用件を言うように促された。

「みょうじなまえのことなんですが」
「彼女がどうかしたのか」
「部室で問題を起こしました。部員たちの持ち物を汚し、トロフィーまでをも破損。部を乱したみょうじを退部させるべきだと、」
「用はそれだけか」

監督は俺の言葉を遮り、睨むように見てきた。声には少なからず威圧が含まれていて思わず固まってしまった。

「みょうじは退部させない」
「なっ!」
「私は自分の目で見たことしか信じない。話は終りだ、行ってよし」

ビッと二本の指で差されたのは音楽室の扉。納得いかなかったがこれ以上は無駄だと思い、とりあえず教室に戻ることにした。

わからない。榊監督があいつを辞めさせない理由が。イライラした俺は壁を思い切り蹴ってから止まっていた足を再び動かした。





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