朝練が始まって三十分ほど経った頃、神崎がコートから姿を消した。私は部室に向かう。 ドアを開けたそこは酷いとしか言いようがなかった。部員たちの鞄の中身が床にぶち撒けられ、(私が)準備したタオルは汚されていた。更には今までの栄光であるトロフィーや賞状までもが壊され破かれている。その部屋の中心には俯く神崎。 「あ、愛奈ちゃん……これ、何があったの…?」 「……ふふ」 顔を上げた彼女は気持ち悪い笑みを浮かべた。神崎は私に近付いてくると自分との位置を入れ換え、頬を殴った。 私の、ね。 殴られた体は床に崩れる。そして丁度部室のドアが開かれた。開けたのは跡部、後ろには侑士と芥川。三人は固まり、呆然としている。 「……どうなってんだ」 跡部が独り言のように漏らした言葉に神崎が反応した。握られた拳は力が入り過ぎて震えている。 「なまえちゃんが……なまえちゃんが部室をめちゃくちゃにしてて!!しかもトロフィーまで…っ!私、我慢出来なくて、気づいたら叩いてた……」 ぽろぽろと涙を溢す神崎を跡部が抱き締めた。私を見る目は冷たく鋭い。芥川は今だ混乱しているようで立ち竦んだまま。 ガッ 侑士が倒れ込んでいる私を殴った。 |