「景吾くん、ドリンクとタオルここに置いとくね」

忍足と向日の試合を見ている跡部に声をかける。彼は目を離さずに、私に小さく返事をした。

レギュラー、準レギュラーには配り終えたため、私は平部員が練習しているコートに足を運ぶ。

「ドリンクとタオルだよー」

そう呼び掛ければ彼等は驚きの表情を見せる。慌てて走って来た二、三人の部員。不思議そうに首を傾げれば一人が口を開いた。

「あ、あの、これ俺たちに…?」
「そうだよ?」
「!ありがとうございます」
「「ありがとうございます!」」

一人がお礼を言えば他の部員たちも続けるように頭を下げた。首を傾げたままでいるとさっきの子が話始める。

「今まで一度も俺たちにドリンク配られたことなかったんで嬉しかったんですよ。なまえ先輩、本当にありがとうございますっ」
「そんな……私はマネとして当然のことをしただけだからお礼なんて言わなくていいよ。それに配り出すの遅れちゃったし……。さ、休憩が終わったら早く練習再開ね!」
「「はい!!」」

ラケットを持ち直しコートに戻って行く彼等を見ながら私は近くにあったベンチに腰を下ろし、ノートを開く。平部員の練習メニューを考えるためだ。軽く息を吐いてからシャーペンを握り締めた。





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