夜遅く、それはまた急に、あたしはクロロから呼び出される。
しかも、23時にいつものビルの屋上にこい、という上から目線たっぷりのメールで。
彼らしいといえば彼らしいけど。
本当に非常識きまわりない。
というか、こういったときにはあたしには拒否権はもはや皆無だ。
だから、いつものように、了解、とだけ送って、時間に間に合うように身支度を整えてから、その場所へと赴く。
思ったよりも寒い。
はぁ、と息をはくと白く変わる。
こないだまで、暑い、暑い、とアイスを片手にうなっていたと思うと、季節が変わるのは早いな、なんて少し哀愁漂うような気持ちでいれば、ジャスト5分前にその場所へと着いた。
そこには、団長スタイルの彼が、ビルの柵に背中を預けながら待っていて。
珍しい。
彼は、いつもは、団長の名の通り、社長出勤のごとく、5分は遅れてくる。
片手を軽くあげる彼に、少し小走りで近づく。
珍しいね、と声をかければ、ふっと笑うように息をはいてから、たまにはな、と言った。
今日は、お前に頼み、いや、話しがあってな。
と言う彼。
いつもと雰囲気が違う彼に戸惑いながらも、気付かないことを装う。
え、依頼?
と尋ねれば、違う、と言われる。
じゃあ、まだあたしの念能力狙ってるわけ?
と冗談混じりで睨むようにして言うと、それでもないさ、と彼は笑った。
私は情報屋だ。
念能力はざっくり言うと相手を見ただけで情報を手に入れる、という簡単、かつ使い勝手のいいもの。
彼、クロロとの出会いもそこからだ。
好青年のような笑顔で近づく彼の情報を手に入れたら、なんと幻影旅団。
そして私の念を盗もうとしていることを知り、必死にうまく拒否していたら、いつの間にか仲良くなって、今では依頼も受けるし、プライベートでもよく会うくらいだ。
彼の性格や特徴なんてもう念の情報に頼らなくてもわかりきっているとこまで来た。
それはさておき、今の状態はただただ沈黙。
彼が口を開こうとしないので、あたしが先に世間話を。
今日、シャルに会ったよ。
なんか、文句いっぱい垂れてた。
最初、可哀相だな、って思ったけど、あんな文句たれな男、やだな、って思ったよ。
そう笑いながら言えば、彼もははっと言いながら笑った。
彼はそして、はぁっと一息。
あ、白い息。
なぁ、俺はお前が
そう言った彼の言葉を遮るように、私は、
ねぇ、クロロ、今日は月が綺麗だねと言った。
ごめん、クロロ。
あたしはその先は聞きたくないよ、答えたくないし、クロロはそういうふうには見れない。
上をじっと見上げて口を固く閉じたあたしを見て、彼は何か悟ったように、そうだな、きれいだなと言って儚く笑った。














×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -