脇とそのまま食事に行き夜遅くに帰宅。その為起床時間も遅く朝の午前十時頃になって高杉から連絡がきていたのに気づいた。仕事明けだろうか、かかってきてた時間は今朝の七時。私の元へ来るつもりだったのか、何かの誘いか。とりあえず高杉の携帯にかけてみる。


「………」


この時間だ。まだ寝ているのだろう、電話には出なかった。何かあったらまた電話をかけてくると思い支度を始めた。



既にドレスは決めている。場所は坂本さんの父親のグループで所有している迎賓館で行われる為、ちょっとしたホームパーティーの様な雰囲気ではないであろう事が分かっていた。そこで私が選んだのはニューヨーク出身のデザイナーのドレス。最近はハリウッド女優等にも人気があるらしいブランドものだ。女性らしく空いた胸元と、くびれを強調するかの様な腰のデザイン、ゆらゆらと揺れるスカートの裾が気に入って購入したものだった。昨日脇にマッサージを受けた背中も割りと大きく空いている。

靴はイタリア製のものにし、アクセサリーは仕事も兼ねている為ダイアのピアスのみ。あまりつけると下品になるし私の顔を覚えてもらわないと困るというのもあるからだ

それらを用意し終わりバックに詰め終わる。行く先の美容院内で着替えさせて貰う為だ。そうしたら丁度美容院の予約時間が近づいてきたのでマンションを出た。

美容院で髪の毛をセットしてもらい着替えを済ます。かなりヒールの高いパンプスを履いてきたが高杉とパーティーに行く時にも履いているような高さのもの。歩く事に何ら違和感はない。ある意味「慣らされた」とも言えるのだろうか。


会場に到着。すると入り口では既に皆が待っていた。一様に仕事とは違う類のスーツを着ている。沖田総悟もその一人でイタリアのブランドのスーツをお洒落に着崩している。幼い顔立ちの割にはよく似合っていると思うし、誕生日パーティーの華やかな雰囲気にもぴったりだと思った。


「要さん…よく似合うなあ」
「そうですか?」


いつものお人好しな笑顔を此方に向ける近藤さんに私も自然と笑顔で答える。いやぁ本当に綺麗だ天使のようだ何だと歯の浮くような言葉を発し続ける近藤さんに、鼻の下が伸びすぎですと山崎君がたしなめる。何時もとは違う雰囲気の中でも何時もの空間が確かにここには存在していた。

会場内に入ると既に結構な人数になっていた。建物を一棟貸し切っているだけある。香りのいい生の花がそこかしこに溢れ、動き回っているコンパニオンも寄せ集めのアルバイトの様な類いの人達ではなさそうだ。立ちい振る舞いがプロを意識させる。

立食型式になっているので美味しそうな匂いを漂わせた料理がそこかしこに並んでいるが、和洋中ベトナムに韓国、ロシアに南米、エジプトと料理の国籍も様々。宗教上の理由から日本語と英語とアラビア語らしき字で肉の表示もされている。このパーティーが坂本さんの今後の人脈作りに繋がるのだとその意味に改めて気付かされ、背筋が一瞬緊張の為に強ばった。

コンパニオンが配っているシャンパンを一口、唇と喉を湿らす。珍しい事に緊張しているらしい、乾きを感じたからだ。シュワシュワとした炭酸独特の感覚が今は特に心地よく感じ、普段と変わらない喉越しに一瞬安堵感を覚える。


「緊張でもしてんじゃねぇだろうな」
「…土方こそ」


いつもの表情である事に違いはないし声の調子も一緒。だけど土方が何を考えているか分かる。


煙草吸いたいんでしょ?


やはりここでも禁煙だしこの雰囲気だ。吸いたくなる気持ちも分かる。一応シガーをたしなむ部屋は別に設置されているらしい。海外からの客の為にも設置してあるのだろう。


「葉巻なんて…吸わないでしょ?」
「まあな」
「じゃあどうしてもって時は言って。私も付き合うから」


どこか近くに吸いに行こう、と言うと土方は「ああ、分かった」と言ってやっと少しだけ笑った。


坂本さんの挨拶が終わり周りが一様に砕けた雰囲気になる。人にもあちらこちらに流れが出来始めていた頃だった。


「あれ?要じゃねぇの?」
「坂田…」


何年にもわたって聞いてきた声。確信をもって声の主を目で探すと、何時ものやる気のない両目が驚きの色を湛えている。もしかしたら私も同じ様な表情をしていたかもしれない。声のトーンが少しだけ高かったから。


「何でお前…にしてもやっぱ綺麗だな」
「はいはい、ありがと。私は仕事で来てる。坂田は?」
「俺の場合は腐れ縁だから」


来たくて来たわけじゃねぇよ、と頭を掻きながらウイスキーを煽る。面倒臭さを酒で紛らそうとしているようにも見える。そういえば昔からそうだった。そしてその表情のまま私に質問を浴びせた。


「高杉見てねぇ?」


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