帰る時間になり皆で坂本さんと陸奥さんの見送りをする。坂本さんはまだ呑みたいと子供の様に駄々をこねだが陸奥さんがそれを許さなかった。彼は引きづられる様にしてタクシーに乗った。

そしてそれを見届けてから専務もタクシーへ。後には私達五人が残った。その五人で何処かへ行こうという話になったがどうせ近藤さんの行きつけのクラブに違いない。さりげなく断りを入れ残念がる近藤さんを尻目に私も帰る為タクシーへ乗り込もうとした。すると俺も、と言い沖田総悟が一緒にタクシーに乗ってきた。


「どうしたの?」
「一応書類を置いてこようと思って」


沖田総悟が持っていたのは資料として持参してきた書類の束。明日は週末だから無くしても困るし持って歩くのも面倒に思ったのだろう。いつもならこういう役割は山崎君が担うのだが。まあ他の用事も会社に行ったらあるのかもしれない。そう考えて方角も一緒だし途中まで沖田総悟と行く事にした。


「要さんは白が似合いますね」
「そう?」


車中、沖田総悟からそのような事を言われた。そんな事言われたの初めて。まあ白いスーツ自体ほとんど着る事はない、これは私の勝負服だから。白は顔色を明るくさせてくれるしある程度の華やかさもある。そして顔も憶えて貰いやすいから。白は特別な時だけよ、と言うと


「もったいねー。俺の中で要さんは白のイメージなんでね」
「何で?」
「いっつも人の為に働いてるから。白は明るい色だけど何にでも染まっちまうでしょ?」
「…確かに私っぽいかも」


そう言うと沖田総悟は「でしょ?」と意地悪そうな顔を私に向けて微かに笑った。

でも、


人の為にばっかり…ねえ…


確かに私はそうかもしれない。その言葉がやけに頭の中でぐるぐる回る。確かに白は何にでも染まる色。黒にも赤にも青にでも、人の為に。じゃあ本当の私自身は何色?白に覆われる前の私は一体何色なんだろう。

これからの私の目の前に広がる世界はこの夜景と一緒の黒なのか、このスーツの色と一緒の白なのか。どちらにしろ私を待っているのはロクでもない色に違いないとキラキラした窓際を眺めつつ、疲れた頭でぼんやりと考えていた。


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