私と坂本さんの関係のせいか、坂本さんの天真爛漫な性格のおかげというか、話はトントン拍子に進んでいく。彼は一応先方の責任者らしい。そして坂本さんと一緒に同伴していた陸奥さんという女性が実際は仕切っていたのだろう、彼女の仕事ぶりには目を見張るものがあったからだ。

坂本さんはある大グループ会社の社長の息子という立場であるものの、次期社長になる為の修行という形で同じグループ内の今の子会社に在籍しているらしい。しかし今の会社でも東証一部上場企業だし、最近では宇宙事業にも着手している会社だ。しかもそれを提案したのは坂本さんらしい。

今回私達と接点を持てなかったのはその宇宙開発に関するプロジェクトが前倒しに勧めなければならない事情ができたらしく、律儀にも私達に謝罪してきた。それでも全くと言っていい程プロジェクトの内容は頭の中に入っているらしく、質問に言い淀んだりはぐらかしたりするという事はなかった。


何て人…。礼儀も正しいし…

何で高杉の知り合いなんだろ


しばらくして酒も進み、話もひと段落する。プロジェクトの成功への確約も取る事が出来てお互いに満足した形で終われそうだ。私は少し安心したのと、化粧崩れが心配になって来たのでそっと席を立ち、お手洗いに向かわせてもらった。


お手洗いから出て来ると坂本さんが前方からやって来た。あれだけお酒が進んだのだ、お手洗いに行くのもおかしくはない。しかし坂本さんは私の姿を見つけるなり話をしたいと私を呼びとめた。ここで断る理由もないので少し離れた同じ階のバー付きのラウンジに二人で向かう。

あまり長居をするつもりはなかったのでバーカウンターの方に座る。私はオレンジジュース、坂本さんはジャックダニエルをロックで頼んだ。

それから二人で大学の頃の話をした。あのキャンパスはどうだったとか、食堂のカレーは美味しかったとかそんな他愛無い話を。


「高杉は元気かや?」
「ええ。あいつならナイフで刺しても死ぬような男じゃありませんから」


いきなり高杉の話が出て来たので一瞬戸惑ったものの冗談交じりに返すと、坂本さんは確かにそうだ、と大きく笑った。また何の濁りのない無邪気な笑い方で。しかし私と高杉の関係を知っててそのような事を聞いてきたのかは、その表情からは押し測る事が出来ない。すると


「あいつは意外に不器用じゃからな。分かってやってくれ」
「…え?」
「友達じゃろー?」


そう言うと坂本さんは名刺を取り出し、プライベート用だからと言い、自分の携帯やメールのアドレスをその場で書き私に寄こした。

何かあったら相談にのるからと、まるで私が坂本さんを必要とする事がありそうな物言いに私は素直に「ありがとうございます」と言って素直に名刺を頂くしかなかった。


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