誰が何と言おうと俺は君が優しい人だと言える自信があるよ。


「…君は自分の事を好きじゃなかったけれど、俺は君が好きだった」


臨也は呟いた。
悲しそうに苦しそうに。


「でも君は俺が嫌いだった。まあ仕方ないよね、嫌われるようにしたんだし?」


そう、仕方がない事なのだと彼は笑った。
彼は笑い続ける。


「だって俺は好かれるのが嫌いだから。愛したいけれど愛されるのは嫌なんだよ」


いつか愛されなくなったら壊れてしまうだろうから、と臨也は心の中で付け足す。
顔にかかる冷たい風に笑みを零す。


「ねえ、シズちゃん。さっきからだんまりじゃない。何か喋ってよ」


目の前で臨也の言葉にこれっぽっちにも耳を貸さず、静雄は壁に寄り掛かっている。


「まあシズちゃんは今喋れないし、俺の言葉も届かないのは当然かな」


寄り掛かった静雄の肩に臨也は寄り掛かる。
二人分の体温が臨也と静雄を包む。


「ねえ、シズちゃん…目、覚ましてよ」


小さな小さな声で臨也は呟く。
臨也の目から涙が流れ、床に小さな染みを作る。


「……シズちゃん、最後に何か君の声が聞きたいよ」


静雄は未だ寄り掛かって目を閉じている。


「……本当は、君と幸せに居たかった」


二人の間の床に赤い染みが広がる。


「こんな俺と居てくれてありがとう……」


大好きだったよ


その言葉は誰にも届く事はなかった。
××が気がついた時には、もう全て終わっていて。
××の愛した人間が血だまりの中、涙の跡が残る幸せそうな顔で眠っていた。

彼は息をしていなかった。


何故こんな事になる前に俺は彼に愛してると伝えなかったのだろうか。
その言葉は彼の心の奥深くに仕舞われた。





ロザリオに問う



(愛した人を失ったのは)
(孤独な人間と孤独な化け物)
(どちらだったのか)









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