新羅は私を愛してくれる、変人だ。
首の無い私を愛してくれる。


『何故新羅は私がスキなんだ?』


明らかに自惚れているような問い掛け。
しかしこれは自惚れではない。
少なくとも、私の中では。


「セルティが可愛いからだよ!ていうか二人の愛に理由はいらないよ!セルティ」


新羅はいつも真っ直ぐに私にきもちを伝えてくれる。
毎日一緒に過ごせば、
それが痛いほど感じられる。
私は首が無い。
故に会話が出来ない。


「…セルティ?」


気持ちを伝える手段は手の中に収まるPDAだけ。
これが私と新羅の心を繋いでいる………


「違うよセルティ」


!?


「僕とセルティは、言葉で繋がるような関係じゃないよ」


……新羅は不思議だ。
何故私の考えている事が分かるのだろうか。


「愛している相手の気持ちは分かるさ」


新羅は優しく微笑みかけてくれた。
・・・。


「20年間も一緒にいるし、僕はキミが大好きなんだ。それくらい分かって当然だよ」

『人間じゃない私の気持ちが分かるのか?』

「僕にとって、キミは人間でも人間でなくてもいい。キミが、たとえミミズでも僕はキミを愛しているさ」

『気持ち悪いたとえはやめろ』

「あははっごめんごめん。でも、本気だよ」


新羅はまじめな顔でそう言った。
私をここまで愛してくれる人間は、この世界を探してもきっと、新羅しかいない。
私がどんなになろうとも、彼は私を愛してくれると言っている。
首がなくても。
思い切りの愛情をくれる。


「・・・セルティ?」


私に首がないから、「泣く」というものが分からないが、
多分、この時私は泣いていた。
首があったら泣いていたはずだ。


「セルティ・・・泣いてるの?」


やはり新羅はすごい。
私が泣いてることを分かってくれた。
私は震える手でPDAに文字を打ち込む。


『しんらはわたしをあいしてくれているだろう?』

「うん、当たり前だよ」

『でもな、このせかいにはしんらみたいにわたしをあいしてくれるひとはきっといないんだ』

「・・・」

『だからしんらがいなくなったらわたしはきっとひとりぼっちだ』

「セルティ」


っ・・・?
新羅はいきなり私を抱きしめた。
いつもならここでぶっ飛ばしてやるのだが、やけに新羅が
まじめモードだから、それが出来ない。


「セルティは、皆から愛されてるよ。
ほら、あの少年・・・竜ヶ峰君とか、
杏里ちゃんとか
料理の師匠、美香ちゃんとか
不本意だけど、臨也だって少なくともキミを嫌っていない。
それに静雄だって居るじゃないか。
キミは一人じゃないよ」


・・・でもな、新羅。


『わたしがあいしているのはおまえだけなんだ』


皆は大好きだ。一緒にいて面白い。悪くない。
だけど、だけどな。
お前がいなくなったら私はおかしくなるだろう。
それだけ、お前を愛している。
文字じゃ伝わらないかもしれないけど。


『お前がいなくなったら、わたしはしんでしまうかもしれないんだ』


だから、無理だと分かっていながらも望んでしまう。
1つのわがまま。


『わたしとずっといっしょにいてくれ、しんら』


お願いだから、私の前から消えないで。
今だけは、このぬくもりの中で。
少しだけ、泣かせて。



-えんど-