〜♪


携帯のメール着信音が響く。
ディスプレイに表示されたのは《折原 臨也》の文字。


「また…」


帝人は表示された彼の名前を見て嘆息する。
いや、正しくは表示された彼の名前を見て胸を高鳴らせた自分に嘆息した。
いつからか、なんて覚えていない。
ただ、気が付いたら特別な存在になっていた。
その気持ちが恋なのだとその時帝人はまだ理解出来ていなかった。


「えーと、何々」

『やあ帝人君。
少しばかり君に用事があってさ、
明日少し会えないかな?』

「…っな……」


メールを読み上げた瞬間に顔に熱が集まるのが分かる。


「何でだろう…凄くドキドキするんだけど…」


そう呟きながらメールの返信を打っていった。


『明日なら特に用事もないので
大丈夫ですよ』

「…これじゃあ素っ気ないかな……?」


帝人はふと不安にかられる。
そして何回も自分の打った返信文を推敲していった。


「ああ…こうじゃない、でもこうでもない…」


そして軽く30分程経った後に
「…よし!」


帝人の満足する出来になりようやく臨也へ返信する。


「早く返信来ないかな…」


自室のベッドにダイブし、携帯を見つめる。
しばらくして携帯は着信音を鳴らした。


〜♪〜♪


「っ…!」


急いで帝人は携帯を確認する。
新着メールが一通。勿論臨也からのメールだ。


『予定が無いなら良かったよ。
じゃあ明日、池袋駅西口に待ち合わせね?』

「西口…」


何だかデートみたいだ、と帝人は顔を綻ばせながら『了解しました』と返信をした。


「明日……緊張しなければいいけど」


『楽しみにしてるよ』という臨也のメールを見るか見ないか帝人はすぐに眠りについた。


翌日。
待ち合わせの時間に帝人は池袋西口に向かっていた。


「…はあ、帰りたい」


今朝から止まらぬ速い鼓動は今も止まっていない。
顔に熱がたまるし、体はがちがちに緊張している。


「どうしたんだろう、僕」


心配要素を色々抱えつつも、何とか駅に到着した。
するとすでに臨也が待ち合わせ場所に立っていた。


「臨也さん…!」


驚きと共に声にすると、相手が帝人に気付いた。


「やあ、帝人君。時間ピッタリの登場だね」


さも愉快そうに臨也は笑い、帝人に歩み寄った。


「て、ていうか…その服どうしたんですか…!」


帝人が声を震わせながら臨也に聞く。
臨也は今日何故か、いつもの黒コートではなく黒スーツを身に纏っていたのだ。


「いやあ今日は君にアタックをしようかと思ってさ。勝負服的なやつさ」


くつくつと笑い臨也さんは帝人の頭を撫で、それから綺麗に微笑んで帝人にこう言った。


「俺さあ帝人君、好きなんだよね。だから、騙されたと思ってさ、俺に惚れてみない?」

「……へ?」

「今日一日で君の事落としてあげるから覚悟してよ」


そう言って笑った臨也に帝人はただただ心臓を早打ちする事しか出来なかった。





もうすでに落ちてます



(成る程これが恋)
(心臓が煩くて)
(何も言えません)





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