最後まで語れない私をお許し下さいの続きというか補完というか←







目を覚ますと目の前には白い天井が広がっていた。
慌てて身を起こそうとすると、不意に全身が軋む。


「…っ」

「嗚呼、起きたのかい臨也」

「…新羅、」


声のした方に顔を向ければ、幼なじみの新羅が心配そうな顔をして立っていた。


「新羅がここに運んでくれた…訳ないよね、君力ないもんね」

「失礼だね、私だって臨也を運ぶくらいできないとセルティに愛想尽かされてしまうよ」

「ねえ、新羅。答えてよ。誰がここまで運んで来た?」


俺が少し鋭く問えば新羅はやれやれと言った様子で語りはじめた。


「君を運んで来たのが誰かは君が一番良く分かっているんじゃない?
君の考えている通り君を運んで来たのは静雄だ。
君もほとほと呆れるよ。
今回の、不良にやられたんだって?
とんだ失敗じゃない、何ヘマしたのさ…。
倒れて意識を失う君を丁度、運よく静雄が見つけてくれて良かったね。
静雄が血相変えてうちに入って来た時は僕も驚いたよ。
君は出血多量だし。
あと一歩遅れてたら死んでたかもね…」


そこまで新羅がぽつりぽつり話してくれた。


「仕方ないでしょ…今日は油断してたんだよ」

「…理由は?まあ大体分かってるけど」

「分かってるなら聞くな」


顔が熱くなるのが自分でも分かる。
嗚呼くそ、悔しい…。
俺と新羅が下らない攻防をしていると、不意に部屋の扉が開いた。…いや轟音が起き、壊れた。


「……臨也、目覚ましたのか!?」

「シズちゃん…」


扉を壊したシズちゃんであった。
真剣な顔でつかつかと俺に近寄って来る。


「おや、邪魔になっちゃ悪いから私は退散するよ。後は二人で宜しくしてね〜」

「あっ新羅、お前ッ…」


新羅を追いかけようと起き上がろうとし、再び全身が軋む。


「っ…!?」

「てめッ…安静にしてろ!」


シズちゃんが意外に優しい手つきで俺をベッドに寝かす。


「……ご、めん」


俺が謝ると、シズちゃんは少し落ち着いて、椅子に座った。
そして俺を見据えて一言。


「…ごめんな」

「…どういう意味」


シズちゃんは俺の手を優しく優しく握った。


「今日臨也が襲われたのは、俺が臨也を池袋に呼んだから…だからよ」


申し訳なさそうにシズちゃんは呟いた。
何言ってるのシズちゃん、


「そりゃ、シズちゃんに誘われて…少し心が浮ついてたけど、それは俺の不注意で」

「いや、俺が悪い、ごめんな…」


不意に優しく抱きしめられる。
シズちゃんの香り、体温、全てが俺を包んだ。


「…シズちゃんは謝らなくていいよ。
俺の、不注意、がいけなかったんだし。
シズちゃん、に誘われて油断して不良、におそわれたなんて自業自得じゃ、ない?
シズちゃんが謝ん、なくていいよ…」


胸が高鳴る。
最初はただの玩具で、暇つぶしにしかすぎなくて。
でも今は俺の方がシズちゃんに振り回されてて。
嗚呼、それでも君が愛しい。
俺は自らの腕を相手の背中に回した。

「ねえシズちゃん」

「…何だ」

「愛の告白でもしてよ」


そう俺が言うと、シズちゃんは笑って俺の耳で囁いた。


「臨也、愛してる」


思わず腰が砕けそうになったのは内緒。
その後にシズちゃんは続けて言った。


「俺は臨也を愛してる。だから俺以外にお前が傷つけられるのは気にいらねえ、
ていうかお前が傷つくのが嫌だ」

「…俺もおんなじ」


お互いに抱きしめる力を強める。


「今回は俺が悪いって事で終わり、ね?」

「……分かったよ」


シズちゃん知ってる?
俺はこんな傷へでもないんだよ?


「…臨也、傷は大丈夫か?」

「うん、痛くないよ、大丈夫…」


嗚呼そうだね、俺が君に気持ちを伝えた日、君はこう言ったね。

「やっと、両思いだ」

ってさ。
その時どれだけ幸せだったか。


「……シズちゃん、俺、眠い…」

「ん、俺はここに居る」

「げ、」

「げって何だ。げって」

「冗談だよ、お休みシズちゃん…」


シズちゃんの体に自分の体を寄せる。
近くにシズちゃんの存在を感じる。
嗚呼、幸せだなあ…。
出来ることならばこれからも、幸せに…幸せに君と居たい。

シズちゃん、だいすきだよ?
あいしてるんだか…ら…ちょっとだけ眠って、また起きたら、キス、してよなんて…自分で言ってて恥ずかしい…な…


ちょっとの間
お休みシズちゃん。




幸せを夢見る私の顔は見ないで



(きっと顔が赤くって)
(緩んだ顔をしているだろうから)
(こんな顔、似合わないよね)