少し。
具体的に言うと、俺の息が絶えるまでに後少し時間があるから、俺の息が絶えるそれまでに暇つぶしに。
俺の愛した人の事を話そうと思う。



彼は相当馬鹿だった。
単細胞だし導火線短いし、物壊しまくるし。

初めて彼と会ったのは、高校の時だろうか。
彼は…まあ、面白そうな人間だと思った。
彼にも俺のゲームの駒になって欲しいと願っていた。
まあ実際に話してみたら想像以上に面白かった。

…相手の方は、あんまり俺の印象良くなかったみたいだけど?

それでも俺は彼で遊ぶ事を好んだ。
とても面白い。
俺が彼をちょっと突けば彼は過剰に反応を示してくれる。
それが俺にとっては堪らなく良い暇つぶしになった。


……いつからだろう?
彼の事を愛おしいと感じ始めたのは。

俺はこの世界が詰まらなかった。
何もかもが思い通りにいってしまう。

そんな世界の中で
たった一人。

中々うまくいかない人間が一人。
それが彼。


たまに視界に入る金髪も、かけてるサングラスも、煙草をふかして出る紫煙も
全てが思い通りにいかなくて、愛おしい。


こう考えている。
…もしかしたら始めからこう思っていたのかも知れない。

その気持ちを理解した後に、しばらくは混乱していた。

最初は彼の事をただの玩具だと思っていた。
いつの間にか愛しい人になっていた。



「くや……し…な」



自分では、声を出したつもりだったがそれ程声は出なかった。

嗚呼もうすぐ息も絶える。
じゃあ俺と彼がどうなったかの顛末を…語ろう。

俺は彼に気持ちを伝えた。
真剣に。

その時の俺の表情はきっと酷い物だったのだろう。
彼は笑っていた。
笑って俺を抱きしめて…嗚呼何て…言って、くれたん、だっけ?

確か…確か…
嗚呼思い出せない。
彼の笑顔だけがちらつく。
こういう時にも彼は俺の思い通りになってくれない。
でも、そんな君が



だいすき、だった…よ



意識が白い海に沈んでいく感覚。
きっと俺が沈みきったらもう戻る事はないんだろう。

君を愛する事はないだろう。
人を愛する事はしないだろう。
ただただ沈んで、沈んでいき。

目を覚ます事もないのだろう。


心残りは一つだけ。
彼との話を貴女に最後まで語れなかった事。
嗚呼どうか。




最後まで語れない私をお許しください



「……臨也ッ!!」



(意識が完全に沈む前に)
(愛おしいあの金髪と)
(煙草の香が俺を包みました)









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