雨、今日も、明日も明後日も。
こんな雨じゃ外に行けないね、と俺は笑う。


「折角シズちゃんと恋人同士になれたんだから、デートとかしたかったんだけど」

「……天気は誰のせいでもねえだろ」


もくもくと煙草の煙をふかしてシズちゃんは、ぽつりと答えてくれた。
相変わらず、こちらに背を向けているのだけれど。


「たまにはさシズちゃんも乗り気になってよ」


俺が提案してみるとシズちゃんはこっちを向き、


「ノミ蟲なんかとのデートに乗り気なんてなれねーよ」


と笑った。
前までの俺だったらきっとここで気分を害す所なんだけど、
シズちゃんの恋人になった今なら痛い程に分かる。


「シズちゃんが笑ってる、きもーい」

「おい、キモいのは手前の方だろ…。抱き着いてくんな」


俺がシズちゃんを抱きしめればシズちゃんも自分の腕を、俺に絡めてくれる。


「あと少しで零距離」


なんて俺がおねだりしてみれば、シズちゃんはまた笑って、


「可愛げのあるねだり方しろよな、」


なんて言って、俺の唇に自分の唇を重ねてくれる。


「…ん、ん」


もっと深くまでって、絡めた舌を更に絡ませればシズちゃんは応えてくれる。
苦いのに甘いキス、なんておかしいかな?


「…っは、」


しばらくお互いを求め合ったあとに、ゆっくりと互いの唇が離れる。
俺らの視線は少しも逸らされずに、お互いを真正面から見つめ合っていた。


「…やっぱりシズちゃんは俺を愛してくれてるね」

「…っは誰が。気色悪い事言うなよ」


シズちゃんはそんな事言いつつも、俺の頭をゆっくり優しく撫でてくれる。
その手から、指先から滲み出るような優しさが、分かるんだ。
俺を愛してくれてるって。


「ねーシズちゃん、晴れたらどこに行きたい?」

「……手前とならどこでも」

「じゃあしばらくは家でゆっくり過ごそっか。雨もまだ続くみたいだし…」


天気予報は明日も明後日も雨。
でもシズちゃんとする他愛ない会話とか、キスとか、ただただ抱きしめあったりとか。
それだけでも俺は十分かな。



レイニーダーリン



(君と居れたら)
(雨続きでも悪くないかな)



-end-






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