「…臨也」


今日も憎たらしい、天敵の愛しい声が俺を呼ぶ。


「なんだいシズちゃん?俺を殺したいの?」


冗談半分でそう訪ねるとシズちゃんは眉をひそめた。
嗚呼嫌だなぁ、シズちゃんのそういう顔は大嫌いなんだ。


「違うみたいだねぇ?…じゃああれかな、俺とヤりたくなった、とか」


また冗談で訪ねれば更にシズちゃんの額に、先程よりも深い皺がよる。


「ざけんな。誰が手前を抱くためだけにここに来るかよ」

「ふぅん、これもハズレかあ」


じゃあ一体シズちゃんは何しに来たの、

そう問えばきっとすぐに俺の望む答えが、出るのだろう。
だってシズちゃんは俺の思うままに動いてくれてるから。


「ねぇシズちゃん、俺の事どう思ってる?」

「…ノミ蟲」

「ねぇシズちゃん、どんな人が好き?」

「お前みたいに煩くねぇ奴」

「ねぇシズちゃん、君は人を愛せる?」

「…俺の力がある限り愛するのは怖い」

「じゃあシズちゃん、君は誰なら愛せる?」


さあ言ってごらん、その名前を。
君が愛すこと(傷つけること)が出来る唯一の固体の名前を。


「…臨也」


嗚呼ほら、やっぱり俺は君に今日も愛され(傷つけられ)る。

俺は小さく笑みを浮かべる。
このまま君が俺しか愛せなくなれば、それこそ世界(シズちゃん)は俺の手の内に。




世界は君の手の内に


(君は俺の世界の全て)
(君が手に入ったなら)
(俺は世界を手に入れたと同然)




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