『シズちゃん、どうせ今日暇でしょ?俺の家来ない?』


そう臨也から電話が来たのがものの10分前程。丁度俺はその時臨也の家の近くに居たので、迷う事なく臨也の家へと歩を進めた。
そして今、俺は臨也に迎えてもらい臨也の家のソファーに座っている。


「最近忙しくてさー全然寝れてないんだよね…」


隣に座って来た臨也は不意に身体を俺に任せ、目を閉じた。
俺が不満を言う前に臨也は眠りについてしまった。


「…おいおい」


勝手に人を呼出したかと思えば今度は勝手に寝やがって。と悪態を心の中だけでつく。
心の中とは裏腹に、俺は優しく優しく臨也の頭を撫でた。


「…んん…」

「…っと」


一度臨也が身じろぎしたが、起きる様子はない。


「…寝てたら本当に可愛いんだけどな、お前はよ」


頭を撫でる手は止めずに俺は呟いた。艶のある黒髪は指に絡まる事が無かった。


「んまあ…普段のお前も可愛いけど、黙ると尚更可愛いっつーか」


そんな事を呟いていたら、ふ、と自分の中にやましい気持ちが生まれるのに気付いた。
今すぐにでもこいつを抱きしめてめちゃくちゃにしてやりたい、等と考える自分に頭を痛くする。


(こいつは忙しくて寝れてねーんだ、今は寝かしてやんねえと)


そう自分に言い聞かせ、何とかやましい気持ちを抑えようとしたが、どうにも収まる様子が無い。
終わりを知らない自分の欲求に俺は自然と笑みをこぼす。


(本当、こいつにこんなに惚れるなんてよ)


俺は臨也の前髪をかきあげ、晒された柔らかな額にそっと口付けをした。


「とりあえず…今はこれで我慢だ、俺」


キスにも気付かない程、熟睡している臨也を微笑ましく見つめながらも俺は、頭の中では『こいつが起きた後はどうしてやろうか』と馬鹿な事しか考えられなかった。





君に夢中



(とりあえずはお前が起きたら)
(おはようのキスかな)
(…早く起きねえかな)






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