「何…言ってるのシズちゃん」


しばらくさようならだ。
俺がそう言うと臨也は面食らった顔になった。


「…別に手前が嫌いになった訳じゃねえ。ただお前の為に俺は一人になんなきゃなんねえんだ」

「意味わかんない、いきなり何な訳…?」


―…臨也と俺は所謂恋人ってやつだ。
出会いは最悪にお互い嫌い合っていたが、徐々にお互いがお互いに憧れ始めた。
片方が片方にない物を持っている。そんな関係だったのだ。
つまりは俺等は二人で完全体。二人揃って初めて完璧になる。
お互いがお互いに依存を始めたのもこれに気が付いた頃からだった。


『俺、シズちゃんが好き。シズちゃんが居ないと俺どうにかなっちゃいそう』

『…嗚呼、俺もだ』


それから紆余曲折あり、今の恋人という関係に落ち着いた訳だ。
恋人同士になってからというもの、俺は毎日臨也を好きになっていった。
恋人になって初めて分かる、奴の可愛さ、いじらしさ。


『あ、シズちゃんいちごみるく飲んでるー』

『んだよ、悪いか』

『悪くないけど、一口頂戴よ』


こん時の臨也は俺の返事も聞かずに俺の手からいちごみるくを奪って、ご機嫌な様子でそれを飲んでいた。
その臨也の可愛さと言ったら。何物にも比較なぞ出来ないぞ。本当。

"それ程までに愛しい彼をお前は手放す必要があるのか"
俺が何度も、何度も自分に聞いた質問だ。
俺は臨也が好きだ。何物よりも愛している。
自惚れではないが臨也も俺が好きだ。
お互いにこれ程かってくらいに愛し合っている。
でも、だからこそ。


「俺の近くに居ちゃ駄目なんだよ、お前は」


そう言うと途端、臨也は泣き出しそうな顔をした。


「何で、っきなりそんなに…突き離す訳…!」


これには非常に困った。俺は別に臨也を泣かせたいために言ってる訳じゃないんだ。


「俺の傍に居たら、いつか周りごとお前を壊しちまいそうで…怖いんだ」


だから、俺が思い切りお前を抱きしめる様になるまでは…離れていたい。
今涙を流してそれを必死に拭ってるお前を、目茶苦茶に抱きしめたい。
抱きしめて"愛してる"と言いたい。
でも今の俺じゃまだそんな資格ねえから。


「必ず、戻ってくる。だから少しだけ…さよならだ」


俺はきゅうきゅうと苦しくなる心臓に手を当て、臨也の返事を聞かずにその場を走り去った。


いつかまた会えるから、
その時までに俺は強くなるから。


「…そんな事、しないでも」


―…臨也が何か呟いていたような気がした。





ほんの少しの



(本当はお前の涙を拭ってやりたい)
(でも俺は愛せない)
(人を愛しちゃいけないんだ)









電ポルPの『ほんの少しのさよなら』を聞きながら。
相変わらず駄文。

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