気が付くと辺りは暗闇だった。すぐ前さえも見えない程の闇。
俺はそこでただ立ち尽くしていた。


「…誰か」


呟きは意味を成さずに闇に溶け込んでいく。
嗚呼、俺は一人なのか。
そう認識すると、俺はゆっくりとその場に膝を抱えて座り込む。


「ねえ、誰も居ないの」


独り言のように暗闇に向けて何処かに居る誰かに呼び掛ける。
だが返事なんて来る筈もなくて。
ただただ俺はゆっくりと体を小さく縮こませ、膝を抱え込む腕に力を込めた。
いくらの時間が経ったか。
しばらくして、それは聞こえ出した。


「……や」


聞き間違えようもない。
それは俺の愛しい愛しいアイツの声で。


「ざや…いざや、臨也」


何度目かの俺を呼ぶ声で俺の意識はようやく覚醒した。
目を開けると先程までの闇は何処へやら。
視界には明るい金髪が入っていた。
その金色を確認したか否や俺は彼に抱き着く。


「うおっ」


間抜けな声を上げながらも彼は俺を抱きとめる。


「シズちゃん…」

「お前うなされてたぞ、…大丈夫か」


なんて言って本当に心配そうに尋ねてくるものだから、さっきまでの寂しさなんてとうに失ってて。


「シズちゃんが起こしてくれたから大丈夫だよ」


彼を安心させるように俺は彼を抱きしめる腕に力を込める。
嗚呼、さっきまでは自分の膝を抱えていただけだったな、と心の中で笑う。

きっと今みた夢は俺の中に存在する闇なのだろう。
シズちゃんを失った俺なのかもしれない。
そこは悲しく寂しい世界だった。


「…あんな所はもうゴメンかな」

「…ん?」

「何でもないよ、」


俺はもうあそこに行かないようにする方法を知ってる。
とても簡単だ。


「ずっと一緒に居てねシズちゃん、世界で一番愛してる」

「お前こそ離れんなよ?…愛してる」


彼をもう二度と離さない事。
きっと君が居るなら俺はどんな所に行ったって、光を見つけられる気がするから。





リコリスにさよならを



(悲しい思い出に別れを)
(光とともに)
(歩みましょう)






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