ふと、考える時が有る。
人間は死んだ後どうなるだろう。
何時ぞやの少女に告げた様に俺は死後の世界は信じていない。
それでも俺はそれに興味があった。
死んだ後にもしも生まれ変われたとして、でも俺としての記憶がなく、新しい個体として生活するのであったら。
新しい個体は新しい意思しか持たず、元は俺の筈なのに俺の意思等一切持たず、呼吸をし生きるとしたら。


「それはそれで、面白そうだけど…結局の所」


俺としての俺の意思は死んでしまったも同然で。
今俺の隣で寝ている彼を愛して居るこの恋慕の感情も失われ消えるのか、と考えると何とも言えない感情がぞわぞわ、と胸の奥に溜まるような気がする。


「死にたくないな」


ぽつりと誰に言うでも無く呟けば、寝ている彼はまるでタイミングを計っていたかのように俺の腕を引き寄せ俺を抱きしめる。


「…寝ぼけやがったな、シズちゃんの癖に…タイミング良すぎなんだよ、ばか」


ふわり、と仄かに香る煙草の香に包まれ、先程まであったぞわぞわとした不思議な感情はすっかり消え失せていて。
代わりに俺の頬が濡れていた。


「シズちゃん…シズちゃん」


今寝ぼけて俺を抱きしめている彼はまだ先数十年死なないと俺は言い張れる。
でも、俺は?
いくら彼と之まで数え切れない程に殺し合のような喧嘩をしてきたと言っても。
何時何処で何が起きるか分からない。


「…本当はね、」


震える腕で彼を抱きしめ返し、感情をなるべく抑え呟く。


「俺、死ぬのが怖いんだ」


数ヶ月前に運び屋に言った言葉を思い出す。


『俺は正直死ぬのが怖い』


嗚呼、言い方は全く同じだけれど、今の俺と過去の俺のその言葉の意味合いは大分違うんだろうね。


「大切な人を愛した事を忘れたくない…だなんて、人間臭くなったよね…俺も」


多分俺は死ぬまで彼を愛すし、彼は俺が死ぬまで俺を見ててくれる。
でも死んだ後はどうなる?
もし生まれ変わりが存在しても、俺は君を見付けられるのだろうか。
君を愛した事を忘れた俺を君はまた愛してくれるだろうか。


「やっぱりまだ死にたくないや、シズちゃん、ごめんね」


こんな我が儘な奴で。
嗚呼それにしても今日は何だか思考に頭を使い過ぎた気がする。
それに考えも纏まらないし飛び飛びだし…。
あ、瞼が重いや…少し寝るとするか。
お休みシズちゃん、また明日。
君が先に起きたその時は、俺を離さずに俺を待っていてね。
そんな下らない事を考えながら俺はまどろみに身を任せた。





廻り廻って



(また君の腕の中へ)
(戻って来よう)
(此処が俺の居場所だから)





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