▼11/05/26 守りたい


この手で何かを守れるだろうか?

大切な人を。
大好きな人を。
無くしたくない居場所を。
「シズちゃんどうしたの?さっきからぼーっとして…」
「あ?」
さっきからずっと俺の肩に寄り掛かり寝ていた臨也。
いきなり目を覚まし
俺に話し掛けてきた。
「だってシズちゃんさっきから、ずーっと自分の手見つめてるじゃん」
だから変だなーって思って、と臨也は言った。
「別に……考え事してただけだ」
「シズちゃんが?考え事?」
臨也はありえないと言いたげな顔で俺を見つめる。
毎回思うのだが、
こいつは俺の事どんな風に感じてんだか。
「ねーシズちゃんってばー」
臨也が猫なで声で俺に問いただすが、スルー。
「シズちゃーん?」無視無視。
「シズちゃーーんっ!!!!!!!」
ああああうっせぇ!!!
……っと。無心無心。
「っ……ぐすっシズちゃんのいけず………」
…………ぅ。
………無心無心無心!
「……ちっ」
はっきりとした舌打ちはきっと空耳だろう。
そう空耳。
「シズちゃん返事くらいしてよ」
「…………」
臨也が更に近寄ってきたせいか、甘い香りが鼻腔をくすぐる。
香水……変えたみたいだな。
「……おーい」
「……何だよ」
「お。やっと馬鹿シズちゃんが返事した」
臨也が生意気な口を叩くので一発軽くデコピンしてやった。
「ごはっ!!!!!」
デコピンしただけなのにかなりオーバーな反応しやがる………
ああ、そうか。
俺の力が強いのか。
「ってて〜……」
涙目で臨也は自分の額をさする。
「……大丈夫か?」
ちょっと心配なので声を掛ける。
臨也は頬を膨らまして講義してきた。
「もうちょっと加減してよ馬鹿シズちゃん!」
「……加減したつもりだったんだけどな」
俺が苦笑すると臨也はハッと顔を変えた。
「…そ、だよね」
シズちゃんにしては
あんまり痛くなかった。
そう臨也は呟いた。
「俺はこの力使いこなせねぇからな、あんま」
自分の手を照明にかざし見る。
自分の大きな力。
すぐに物を壊してしまう。
加減した筈なのに、壊れてしまう。
きっといつか、臨也も。
「……シズちゃん?」
臨也も、この手で壊してしまうんじゃないか?
「なぁ臨也」
「ん?何?」
「お前怖くねえのか?」
「何がさ」
俺のこの手が
臨也を壊す?
「俺の力、とかさ」
必死に震えそうな声を、押し出す。
どうか、恐いだなんて思ってる事がばれませんように。
「…怖くないよ」
臨也が答えた。
「怖くないよ。シズちゃんだもん」
「…意味に、なってねえよ」
臨也は真剣な目で俺を見る。
深紅の瞳は、ハッキリとした意思を浮かべている。
「シズちゃんは、
そりゃ力強いし
加減したデコピンでもすっごく痛いよ?
でも、シズちゃん
悪い人じゃないじゃん。
その力を悪用したり
しないじゃん?
優しい人じゃん。
優しい人は、
人を壊したり、しないよ
だから怖くないよ」
そう言って臨也は俺の額にキスを落とした。
「…怖くなんか全然ないよ」
それを聞いた後は
あまり覚えていなくって
ただただその言葉に
すごく喜んだ記憶がある。
次の日、目を覚ますと
臨也が俺の腕の中で寝息をたてていて
鏡の中の俺は、頬に涙の跡を残していた。
この腕の中の大切な人。
俺はこいつを壊さないで生きることが出来るだろうか?
まだ少し不安だけれど。
腕の中に感じる
あたたかな温もりが
とても優しかった。




昔書いて公開していたものです。
今読み返すと恥ずかしさで死にたくなります…←







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