23 いざ勉強会へ 私と静雄さんは屋上に行く。きっと屋上には既に岸谷さんと京ちゃんもいるだろう。 松葉杖を使わずに歩けるようになってからは、今まで通り屋上でお昼を過ごすようになった。 実際、松葉杖は1カ月くらい前には使わなくても平気だったらしい。けど、大事を取ってっていうのと静雄さんの反応が面白かったって言う理由で岸谷さんは言わなかったらしい。よく分かんないけど、悪質だー。 そんな事を考えているうちに屋上につく。 案の定見慣れた顔触れ。 『京ちゃぁぁあああんっ』 私はなんの躊躇いも無く京ちゃんに抱き着く。 門「うぉっ…と。どうした」 京ちゃんは私をあやすように頭を撫でる。 『数学分かんない物理わかんない生物わかんない!!!』 そう。只今11の半ば。そして期末テスト2週間前。 門「そんなことだろうと思った。今日からでいいんだな?」 『お願いいたします…』 眉を潜める静雄さん。 不思議そうな顔をする岸谷さん。 困ったように笑う京ちゃん。 半泣きの私。 屋上に変な図が出来上がった。 新「えーっと…何が起こってるの?」 門「ああ。こいつにな、テストの時毎回毎回勉強教えてんだ。中学の時からだったか…あっ名前、勉強なら新羅の方が頭良いぞ」 『へ?そう、なんですか?』 私は岸谷さんを見る。 新「いや、うーん…悪くは無い、かな?」 私は京ちゃんから離れて岸谷さんの目の前に立つ。 『勉強を、教えてくださいお願いいたします』 深々と頭を下げる。 新「お安い御用さ。」 『あ、ありがとうございます!!!じゃあ放課後私の家で!!』 新「名前ちゃん家なんだ?」 門「あー、いつもそうなんだ。あまり夜こいつを出歩かせたくねえし」 新「わかったよ」 みんなが私に協力してくれる。嬉しい。こんなに幸せな日々は今まであったろうか。いや、でもテストは嫌だな。 門「静雄はどうする」 京ちゃんが静雄さんの方を向いて声をかける。 静「あ?」 新「勉強会だよ」 静「………行く」 静雄さんも来るって!今日は勉強会だ。 今まで友達と言う友達なんて、京ちゃんくらいしかいなかったから勉強会なんてやったことがない。何故ならいつも勉強会というより一方的に私が京ちゃんに教えてもらう形になってしまうから。 『じゃあ今日は勉強会ですね!!』 放課後。私達は昇降口に集まり、私の家へと向かう。普段は持って帰らない教科書やノート、問題集などが入っていて物凄く鞄が重い。 こんなものを持って20分歩くなんて憂鬱だ。 でもこれからお勉強をと考えればなんのこれしき…!!! 静「大丈夫か?百面相してるぞ?」 私の顔を覗き込む静雄さん。突然の事にびっくりしてしまう。 そんなに変な顔してたかな。 『大丈夫ですよ!……っとととうわぁっ』 静雄さんの方を向こうと思って体を回転させたら、鞄遠心力によって振り回され重さを増しバランスを崩す。 そしてそのまま重心は鞄の方へと持って行かれ敢え無く転倒。 静「お、おい大丈夫か!?」 静雄さんは手を差し伸べて来てくれる。 私は静雄そんの手を握り、鞄は置いたまま自分だけ立つ。 『すみません…全然大丈夫です』 にへら、と笑うと静雄さんの眉間に皺が。 なんか不味いこと言ったかな? 静雄さんはズカズカと私の後方に転がっている鞄の元へと歩いていく。 そしてひょいっと持ち上げる。 『えっ』 静雄さんの眉間の静雄はさらに深まる。 静「お前…こんな重いもん持ってたのかよ。言ってくりゃぁすぐ持ったのによ」 『そんな!大丈夫です余裕です!申し訳ないです自分で持ちます!!』 静「俺は…まぁ知っての通り馬鹿力だ。こんなもん持つのに造作もねえ。だけど名前にとっちゃ重いだろ」 ああ、なんて優しい人なんだろう。 確かに鞄の重さで転倒してしまったのは紛れも無い事実だ。 『ぅぅ…じゃあ、よろしくお願いします』 そう言うと静雄さんの眉間の皺は無くなり、伏せ目がちに笑う。 静雄さんは「無理すんな」と言って私の頭をわしゃわしゃと掻き回してから歩いて行った。 私も急いで後を追う。少し先では岸谷さんと京ちゃんがこっちを見て待っていた。 新「コントみたいだね」 門「そうだな」 遠くて二人が何を喋っているのかは分からなかったけど、笑っているようだった。 さあ、いざ私の家へ。いざ勉強会へ。 [しおり/戻る] |