※臨正







「紀田正臣くん、はっけーん」

正臣は内心で舌打ち、いや盛大に舌打ちをした。臨也はその音に顔を顰める。
何でこういう時にこの人に会ってしまうんだろう。いつか死んでくれないかな。
そうは思っていても、それに反する思いが心の中に確かに存在していることに、正臣は気付いていた。認めたくないその感情に、自分が徐々に蝕まれていっていることも。
だから正臣は会いたくなかった。目の前の黒づくめの男に。

「臨也さん、何で池袋にいるんですか」
「そりゃあ勿論、君に会いにきたんだよ」

両手を広げてニコニコと笑う臨也に、正臣は一瞬揺らぎかけた。
自分に会いにきた、その言葉を聞いて咄嗟に言いそうになった言葉を飲み込む。
そうだ、この人が言うことはいつも嘘ばかり。どうせ何を言ったって変わりはしないんだから。

「そうだ、今日は君に言いたいことがあるんだよ!」
「……あの、俺帝人との約束が、」
「あれぇ?この間、俺の前で他の男の話するなって言ったばっかりだよね?」

臨也は急に正臣との距離を縮め、変に疑うような視線を向けてくる目を覗き込んだ。その目は酷く冷たく。
正臣はその目に釘付け、正しくは凍り付けになったとでもいった方がいいのかもしれない。
体が硬直してその場から動けなかった。
弧を描くように臨也の唇が歪む。その笑みに正臣は悪寒が走った。

「紀田、正臣くん?君は誰のモノ?」

何を言い出すんだ。正臣は驚いて臨也のその赤い瞳を凝視してしまう。
瞳を見つめてもその中は濁っていて淀んでいて、何を考えているか全く読めなかった。
俺は俺のモノだ。そうあの日に決めたはずなのに、またこの男に自分の行動の主導権を握られるのは嫌だ。
意を決して口を開いた正臣を、臨也が制した。その唇を以てして。

「っ……!」

正臣は目の前の現状が理解できない。本当にこの人は全く読めないことをしてくれる。おかげで俺はパニック状態だ。
目の前の整った顔が、妙に幻のように歪んで見えた。
二人の周りにいた少ししかいない人数の人たちも、歩みを止めて驚いたようにその光景を見つめる。

折原臨也という男は恥を知らない。常識外れ、と言った方がいいのかもしれないが、厚顔無恥。まさにその言葉が似合うだろう。
だが彼自身、自分のことをネカマと言ってネット上で女を演じているが、実際は情報収集のためになりきっているわけで。
本当は常識外れではなく、見せかけ。本性は聡い情報屋。
正臣はそんなところも含めて彼を理解しているつもりだった。もっとも、あの頃よりは。
だけど結局は、理解しているといってもこういう唐突な行動は読めないわけであって。
たったの数秒の間、二人を含め、二人の周りの人間は静まりかえった。

「っ、本当、臨也さんっていつ死んでくれるんですか」
「それがキスされた人が言う言葉?そこはさ、臨也さんもっと…!とかってせがまなきゃ駄目でしょ」

そう淡々と自分の妄想を語りだす臨也に、正臣は呆れながらも頬が緩むのを感じた。
不意に臨也と目が合って、自分の緩んだ頬を首を横に振って直す。臨也はそんな正臣を見て柔らかい笑みを浮かべていた。
ああ、もう認めてしまおう。臨也の笑みを見て正臣は決心する。
周りの人間がまたざわり、とどよめく。

「臨也さん、もっと、」

数秒見つめ合ったあと、再び唇を重ね合わせた。


さよなら、日常。
(これからは正臣って呼んでいいよね!俺も臨也でいいよ!)
(……やっぱりウザいんで死んでください)



臨正書きました、友人殿。
見事に死にました、友人殿。

ツン→デレになる予定が失敗(´・ω・)
正臣って毒舌ツンデレキャラだよね^^
臨也はいつも通りに変態を貫く←

さぁ、臨静を書こう!!^q^


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