※生徒×先生パロ





「はい、今日はここまで」

ガタガタと生徒が気だるそうに椅子から立ち上がる。
静雄はチョークを黒板から離して、教室全体を見回した。
窓際の一番後ろに座っている生徒と目が合う。
静雄はあの赤い瞳が、何かを探るように見つめる瞳が好きではなかった。
視線を逸らして口を開ける。

「はい、これ明日までの宿題。後で配っておくように」
「えー」

生徒の文句を無視して、静雄は教卓にプリントの山を置いた。
もう既に教室は生徒の会話する声で溢れている。
そして静雄の教科だけ、点数の悪い問題児を呼び付ける。

「あと……折原、放課後図書室に来い」
「はい、わかりました」
「えー臨也、今日は私と帰るって言ったじゃーん」
「ああ、ごめんね。用事できちゃったからさ」

短ランに赤いTシャツを着た明らかに校則違反と思える服装をしている生徒、折原臨也。
彼は容姿端麗、眉目秀麗で見た目もよければ運動神経もいい。
成績も優秀で女癖と性格の悪さを除けば右に出る者はいないだろう。
そして、折原臨也は静雄の頭を悩ませる問題児の一人でもあった。
臨也は挑発するような目で静雄を軽く睨む。

「ところで平和島先生、どうして俺が呼ばれなければいけないんですか?」
「…お前、わかってんだろ」
「……ええ」

揶揄するような笑みを向けられて、静雄は内心で舌打ちをした。
これだからこいつは嫌なんだ。

臨也は入学当初からいつもこうだった。
入試や入学して間もない頃のテストは全教科満点に近い点数で首位だったのに、静雄が英語の担当だと知った瞬間、臨也の英語のテストの点数が赤点ギリギリになった。
ちなみに他の教科はいつも満点近い。
それに静雄の授業だけ、格段に授業態度が悪い。
この間、静雄が理科担当(主に生物担当)の新羅に臨也の授業態度のことについて話すと、とても大人しくて真面目な優等生だけど、と返ってきた。
そのことを聞いて以来、静雄は内心不安だった。
確かに静雄の教科だけ赤点を取ったり、授業態度が悪かったりするのには苛ついている。
しかし、それだけ俺は嫌われているのか、と静雄を落胆させる原因にもなっていた。

「…じゃあまた放課後な」

俺のことが嫌いなら女を優先させればいいのに。
静雄はそう不思議に思い、どこか心を落胆させながらも、教科書と教材を持って教室を後にした。

「平和島先生かぁ、よく見るとかっこいいよね」
「駄目だよ、あれは俺のだから」
「ふーん…って、え?」

臨也の横で喋っていた女生徒のグループの一人がそう返すと、臨也は不気味な笑みを浮かべてその場から立ち去った。




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