※熱が悪化




男が手にしているのは…包帯?
何をするんだろう、と眺めていたら、俺の腕が頭上に纏め上げられた。
その腕を白い布でグルグルに巻かれる。

「な、なにして」
「君がじっとしててくれないようだから実力行使で」

そう言う男はまだ包帯を巻き続けている。
流石に恐怖感を抱かなくなった俺はこのイカれた医者を蹴りあげようと足を振り上げた。
すると、男は見てもいないのに俺の足を掴んで、悪魔のような笑みで笑った。

「抵抗しちゃ駄目、って言ったでしょー?」
「うぐっ、くぁ…!」

骨が粉砕しそうな程の握力で足首を握られて、呻き声が出る。
俺の足首がこんな簡単に折れるはずない、と思っているのに何故か痛みを感じてしまう。
それほどまでにこいつの握力が強いのか、或いは。
もう一方の可能性は頭の中で消し去って、こいつの手から逃れる方法だけを考えた。

「やめ、ろ……!」

足をぶんぶんと振って、逃れようとしてもがっちりと掴まれていて、離れない。
目の前の男が本当に何を考えているかわからない、眩暈がして頭を抱えた。
それから漸く男が俺の足から手を離す。

「熱、下げるには汗をかくのが一番いいから」

怪しげに笑んで、男は俺のベルトを外し始めた。
やめさせようと手で制しようと思っても、手が包帯で縛られているから手をもっていくことができない。
抵抗も何もできず、只俺はじっと黙してしまった。
否、それどころじゃなかった。
何よりも寒い。ここはとてつもなく寒い。そのせいで熱が上がっていくような気がして。
心の中は嫌悪感でいっぱいだったのに、頭がくらくらしてとうとう熱にやられるのかと思っていた。

「ねつ、あがって、る……」
「うん、知ってる。まぁ、そっちの方が俺としては都合がいいんだけど…」
「…え?」
「ううん、何でもない、こっちの話」

よく聞き取れなかった言葉を聞き返すと、何でもないと言われたから少し腹が立つ。
というか熱が上がったかもしれない、と患者が言っているのに何もせずに、況してや悪化させるような医者がどこにいるのだろうか。
……いや、目の前にいるけれど。
そう考えている合間にも、いつの間にかスラックスは俺の足からずり落ちていて、下着まで膝あたりまで下ろされていた。
その光景を目の当たりにして、溶けた頭が冴えていく。

「ちょ、な、なに……」
「温める作業と……まぁ、一応検査?」

一応って何だよ、一応って。
目の前にいる絶対医者ではない医者を軽く睨むと、嘲笑したような苦笑が返ってきた。
睨んでいると、不意に下半身からゾクゾクと這いあがってくる何かを感じた。
背筋に弱い電流が走ったような、そんな感覚。
慌てて下半身を見てみると、男の手が俺の……。

「え、はぁ!?は、離せ!」
「どうして?君を温めるために俺はこうして擦ってあげてるのに?」
「や、やめ、はぁ、んぁ…いやだ…!」

遠慮なく擦られる感覚と、熱が体を蝕んでいく感覚が同時に襲ってきて、もう何をされているかわからなくなった。
目の前の視界さえぼんやりとしてきて、男に全ての神経を持っていかれて。
理性という自我を手放してしまいそうだった。
ただ口から出るのははしたない男の嬌声で、それを我慢するために必死に男の白衣を掴んだ。

「っく、ぁ、んぐっ…!」
「こら、声我慢しちゃ駄目」

また子供を叱りつけるような口調で、男は唇を噛んでいた俺の口を舐めた。
それでも口を開ける気にはなれなくて、より一層噛み締めると、何やら柔らかいものが唇に当たった。
口付けられている、と気付くのは数秒後。
息が苦しくなるほど長い時間唇を合わせられ、俺が酸素を求めて口を開くとぬるり、と口内に侵入してくる得体の知れない何か。
気持ち悪い、俺の最初の印象。
なのに口内を這いずり回られて色んなところを擽られると、何故だか溶けるような感覚に陥ってしまう。
何だ、これ。俺、今何されてるんだ。意味がわからない。どうして、何故。
考えれば考える程余計わからなくなってきて、視界までもが歪んだ気がした。

「ふはぁ、あ、いやっ、だ」
「そんなこと言ってこっちはノリノリなんだけどねぇ?」

そう言って男は俺の股間辺りを指して笑んでいる。
もう嫌だ、こんな悪趣味な。
そう思っているのに、男が言った通り俺の体はどんどん熱くなっていくような気がした。
それが熱のせいなのかどうかもわからないのに。

「ふぁ、は、あつ…っ」
「温かくなってきたでしょ?」
「あ、ぁ、あつい…!」

必死に訴えても男はただ笑んでいるだけで、俺の性器を更に扱いてきた。
一気に背筋が張り詰めるほどの感覚に、俺はどうにかなってしまいそうになる。
あつい、今まで寒かったのに。
頭の中は既に熱に支配されていて、もうどうにでもなってしまえ、そう思えるほど蕩けていた。




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