※やっぱりセクハラ感溢れてる





「しゃ、シャツを!?」

相手がいきなり変なことを言うから、大声を上げてしまった。
そのせいでゴホゴホと咽てしまう。
背中に手が回されて、ゆっくり撫でられる。
その手に嫌悪感を覚えて、涙目になりながらも相手の男をじっと睨んだ。

「ただ検査するだけだよ」

少し溜め息を吐きながら、彼は聴診器を首にかけた。
捲るだけでいいと思うが仕方ない。
検査のためだし、俺の体に興味があるらしいし…いつもならそんな奴ぶっ飛ばしてるけど、金払って来てるわけだからグッと我慢した。
そしてボタンを一つずつ外して、シャツを脱いだ。

「風邪ひいてるから、体も火照ってるね」

口許に手を当てて咳き込んでいると、体をじっくりと見られたような気がした。
その視線から逃げるようにして目を逸らす。
でも、男の言うとおり、鎖骨の辺りから腹部にかけてまでが少し赤くなっていた。

「っ、!?」

いきなり脇腹に触れられて、条件反射で体がビクリと跳ねた。
俺の脇腹を触った手は冷たく、更に指輪のせいで余計冷たく感じた。
それからするすると撫でるように俺の体を触る手のせいで、俺の体は少しずつ冷えていった。
そして、また唐突に聴診器が胸に当てられた。

「、つめたっ……」
「ちょっと我慢してね」

背筋を伸ばして、膝に拳を強く当てて、胸に走る冷たさを我慢した。
鉄の冷たい感触が、真ん中や胸の下辺りにも。
そして、胸の突起にも…!?

「え…?」
「ん?どうしたの?」

そこを押しつぶすように聴診器を当てられて、痛みに声が出そうだった。
ナイフで刺されても、拳銃で撃たれても、何をされても痛みを感じなかったこの体が、たったこれだけで。
目の前からクツクツと喉の奥で笑うような声が聞こえて、恥ずかしくなった。

「っ、も、やめ……」
「これは検査だって、言ってるでしょ?途中でやめることなんかできないよ」

グリグリと聴診器が当てられて、思わず抑えていた声が溢れそうになった。
口許に必死に手を当てて声を我慢する。
そうしていると、何故か指も触れてきて、捏ね繰り回して痛くなるほどに弄られる。
ただでさえ熱で頭がやられているのに、突然な事態と突然の暴力的な感覚によって、更に頭がくらくらした。
わからない、目の前の男が何をしているのか、何をしたいのか。

「心臓の音、凄いよ」

優しい声音でそう言われて鳥肌が立ちそうになった。
今思えばどうしてこんなことをされなければならない?
嫌だ、こんなの嫌だ、そう何度も心の中で叫んでいるのに言葉にならない。
今口を開けたら変な声まで漏れてしまいそうで、口を塞ぎながらもごもごと嫌だと訴えた。

「嫌だ、ねぇ……」
「ん、ふぁ?」

急に手が止められて、聴診器も外されて、やっとやめてくれるのかと安心した。
と、次の瞬間、男の顔が近付いてきて俺は顔を遠ざけた。
すると、後頭部に手が回って引き寄せられ、抵抗ができなくなった。
薬を使われたわけでもなく、絶対的な支配をもっているわけでもないのに、この男に逆らえない。
きっと熱のせいなんだ、と自己完結させた。

「っ!」

目を閉じて目の前の男の顔を見ないようにしていると、突然耳に違和感を感じた。
耳に何か生温かいものが這う。
……舐め、られてる…?

「っな、なにを…ぁ!」
「ふーん、痛みには鈍感なくせに、快楽には敏感なんだー」

顔を離して余裕そうにそう言う男に腹が立った。
でも、体に力が入らなくて、それに体も寒くて冷たくて、余計に動かないようになっていた。

「震えてるね、寒い?」
「寒ぃに決まってんだろ……!」

自分で自分の体を抱きしめて、温めるようにギュッと手に力をこめる。
そんなことをしても全然温まらないけど。
すると、何故かさっきよりか温かくなった男の手が、俺の腕に触れた。

「今から温めてあげるから」

どうやって温めるんだ、と問う前に、俺の背と膝に腕が回され軽々と体を抱きあげられた。
この腕のどこにこんな力があるのかと思うぐらいに軽々と。
自分より小さい男に抱えあげられる自分は、酷く滑稽な気がした。
そのまま医療用の硬いベッドに下ろされ、背中が少し痛くなった。
そして男に馬乗りになられ、驚きで体が硬直する。

「え…は?」
「はい、じゃあじっとしててねー」

まるで子供をあやすように言われ、少し苛々した。
男を睨んでいると、苦笑されて、

「…じっとする気はないんだ?」

と言われて、男が近くの棚から何かを取りだした。




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