「トリックオアトリート」
「…は?」

ここは新宿。
現在、俺は自宅の玄関。
パソコンや携帯と向かい合って仕事に没頭していたら、急になったインターフォン。
しかも夜の11時に。
うんざりした気分でドアを開けると、そこには見慣れた金髪とバーテン服。
それで、冒頭部分のようなことを言うから、ああそういえば今日はそんな日だったなぁ、と少し思い出す。
今日は酔ってなさそうだったから、とりあえず家にあげて、ソファに座らせた。

「で、お菓子だっけ?」

冷蔵庫の中に何かあったっけ…。
思い出しながら、キッチンの方へ向かう。

「おう」

シズちゃんは軽い返事をして、今日だけでいっぱい貰ったであろう、お菓子を小さな袋の中から出していた。
って、レジ袋じゃん。
その中から、何だっけ、アレ……あの棒つきの飴を袋から出して舐めていた。
……なんか可愛いんだけど。
その様子をちょくちょく見ながら、冷蔵庫の中を漁ると、何やら箱に入ったプリンが出てきた。
これ何だっけ、と記憶を辿りながらシズちゃんに出すことにした。

「はい、プリン」
「サンキュー」

見た目高そうなプリンを目の前にして目の色を変えるシズちゃんは多分馬鹿なんだと思う。
こんなんだから俺みたいな奴に捕まるんだよね。
あ、言っておくけど俺はシズちゃんのことを馬鹿だと思ってはいるけど、その分、いやそれ以上に可愛いと思っている。
馬鹿な子ほど可愛いっていう心理、わかるかな?
今だって、スプーンを手にしてプリンのふたを開けて目を輝かせているシズちゃんは……馬鹿っぽくて可愛い。

それと、また言っておくけど俺たちは一応恋人という甘ったるい関係である。
だが、そんなに甘ったるいのは名前だけで、実際は池袋で喧嘩を繰り返している殺伐とした日々。
まぁ夜はそれなりになんだけど。
でもこんな風にシズちゃんの方から俺の家に来てくれるのは珍しくて、気持ちが高揚しているのは確かだった。

「美味しい?」
「…美味しい」

一瞬手を止めて、幸せそうに笑みながら、照れながら呟くシズちゃんは可愛い。
…ってあれ、俺さっきから可愛いしか言ってないような。
シズちゃんがさっきまで舐めていた棒付きの飴はもう噛み砕かれて胃袋に収まったようだ。
そういえば、今日はハロウィンなんだから俺も貰ってもいいんじゃないかな?

「シズちゃん」
「あ?何だよ」
「トリックオアトリート」

俺が笑ってそう言うと、シズちゃんは目を丸くさせて、いきなり慌て始めた。
俺のお菓子はあげられないし…とか呟いてるのが聞こえる。
俺の為だけに真剣に悩む君の姿は何て滑稽なんだろう!
なんて言ったら機嫌損ねて家を破壊されかねないからやめた。

「う…俺、貰ったやつしかねぇし…」
「じゃあ、イタズラ決行だね?」

俺がシズちゃんの顔を覗き込みながら言うと、シズちゃんは顔を真っ赤にさせて視線を逸らしながら頷いた。
空になったプリンの容器は机の上に置いて、まずはシズちゃんの服に手をかけた。
座っているシズちゃんの膝の上に、俺が馬乗りになって。
そしてベストを脱がして、シャツのボタンを外している時、シズちゃんが突然小刻みに震えだした。

「シズちゃん、どうしたの?」
「あ、はっ、わかんねっ」

急にシズちゃんが断続的な荒い息を吐きながら、何かに耐えるように必死に俺の肩に掴まった。
そのせいで肩が粉砕しそうとかいうのはまぁおいといて。
脇腹の辺りを少し擽ると、案の定、

「ひゃぁ!」

という声が上がった。
うーん…何か媚薬入りとか催淫剤入りのとか食べたのかな…。
いくら考えても思いつかな……あ。
そういえばあのプリン、媚薬入ってたんだっけ。
シズちゃんはそんな事全然知らないから、いきなり与えられる快楽に戸惑っているようで。
それなら何とか誤魔化して先に進んでしまおう!
俺はいつもより手際よくシズちゃんのシャツを肌蹴させた。




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