そっとベッドに近付いて、布団の上からシズちゃんの体を手を這わせて確認する。
すると、ただ体に触れただけなのにシズちゃんの体は大きく跳ねあがった。
その直後に息を荒くして、体を震わせる。
そんなに怖かったんだ。多分シズちゃんは俺以外の男は知らないはず。
大勢かどうかは知らないけど、いきなり注射を打たれ普通の体にされ、体を暴かれ暴力を振るわれ。
その光景を想像するだけで吐き気がする。

「シズちゃん……」

名前を呼ぶと目の前の体が大きく跳ねて、くぐもった声を発する。
その後ゆっくりと開いていく瞼に、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「ん……」
「シズちゃん…っ」

うなされていたのか、顔を顰めながら目を覚ます彼の肩に触れる。
その瞳は焦点が合っておらず、ふらふらとどこかを彷徨っているように見えた。
肩を支えて頭を撫でると、シズちゃんがいきなり目を見開き、バシッという音が部屋に響く。
手を、払われた…?

「え?シズちゃ」
「さ、触るなっ!」

自分の体を抱き締めるようにしてガクガクと震えるシズちゃんの言葉が重く突き刺さる。
完全な拒絶の言葉、態度。
赤く腫れた手がうろうろと彷徨う。
どうして、と問い詰めることもできなくて、只視線をシズちゃんに集中させた。
そりゃあ強姦された後だから敏感になるのはわかってる。誰に触れられるのも怖いはずだ。
でも、俺一応は恋人なのに。

「駄目だ、駄目なんだ…」

小さく頭を振りながら呟くシズちゃんはとても弱弱しく見えた。
触れたい、触れたいのに。
いつもなら拒絶の意を示されても懲りずに触れられるけど、今回ばかりは触れることができない。
拳を握りしめていると、シズちゃんの薄い唇が震えだした。

「だって、俺の体、変な奴らに……っ、だから、汚、いっ……」

そう言いながら涙を溢し、体を震わせるシズちゃんに思い切り抱きついた。
痛い、とか言うのが聞こえたのは気のせいということにしておく。
それから何度も駄目だ、という声が聞こえてきたけれどずっと抱き締めていると、グリグリと頭を押しつけて泣きだした。
あ、やっと甘えてくれた。
背中をあやすように数回叩くと、嗚咽が治まりだしてゆっくりと背中に腕が回される。
その何気ない仕草に凄まじい喜びを感じて、一層力強く抱き締めた。

「臨也…俺のこと、嫌いになっただろ……?」

今度は何を言い出すかと思えば。
そんなことない。むしろシズちゃんが好きすぎて俺の方が嫌われるかもしれないぐらいだ。
嫌いじゃないという意味もこめて抱き締めると、返事がこないから心配したのか、うぅっと泣きそうな声が返ってくる。
否、だから違うって!

「嫌いじゃないから!好きだからね?好き、大好き、愛してる」

一回好きと言うと次々と溢れだす愛の言葉に自分でも嫌気がさす。
絶対気持ち悪がってると思って恐る恐るシズちゃんの顔を覗きこんでみると、顔を真っ赤にさせて口をぱくぱくと忙しなく開閉していた。
どうしてこんな反応をするんだろう、今更。と思ったらそういえばシズちゃんに愛を囁いたのはこれが初めてな気がする。
心の中で一方的に呟いていた愛の言葉を除けば、口にしたのはこれが初めてだ。
そうか、だからシズちゃんは不安に。こんなことならずっと愛を囁いておけばよかった。
否、愛を囁けばそれでいいとかいうんじゃないけれど。こんな俺の言葉でもシズちゃんの不安が解消されるなら。
耳元に唇を近づけてまた愛の言葉を囁いた。




「だ、駄目だ!絶対に無理だ…!」
「いや、無理じゃないし駄目でもない。お腹壊したら困るよ、況してや変な奴らの精子でシズちゃんが苦しむなんて俺が許さない」
「じゃあ、何で手前が…!じ、自分でできる、っ!」

所変わってここは風呂場。
新羅がでかけたのを見計らって、後処理をしていないというシズちゃんの服を脱がせ、無理矢理風呂場に押し込めて、今に至る。
何度も何度も首を横に振るシズちゃんを壁際まで追い詰め、ぴたりと肌を密着させた。
自分よりも速い鼓動がダイレクトに伝わってくる。

「俺がしたいの。いいでしょ?」

硬い床にバスタオルを敷いて場所の方も、自分の方も準備万端だ。
ただシズちゃんだけが頷いてくれなくて、じりじりと詰め寄るように見つめ、止めとばかりに拒否権のない質問を投げかけた。
指を絡めると大きく体が跳ねる。
茹で蛸のように真っ赤になった顔を背け、それから何かに耐えるように静かに頷いた。



続。

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