最近シズちゃんを見かけない。

新宿に居続けるのは暇だとか、仕事のためとか言って池袋に来てるんだけど、シズちゃんがまったくもって見当たらない。
ここ数日ずっと池袋に来てるのに噂すらしない。
・・・避けてる?
否、シズちゃんに避けられるような事をした覚えはここ最近ない。
最近は無理矢理行為を強いるようなことだってしてないし・・・。
一体何があったんだろう。
これだけシズちゃんを見かけないと流石に気味が悪くなる。

そして一つの結論に辿り着く。

………浮気?
或いは俺に飽きた?

そんな女々しい結論に辿り着いた。
シズちゃんが俺以外の奴に恋をするとかありえないと思ったんだけど。
あの女黒バイクと仲がいいっていう時点で俺は怪しいと見てる。
大体、何であんなに女と仲がいいのさ。
しかも弟のこと気にかけ過ぎだし、上司には忠実だし。
シズちゃんってば、フラグ立ちすぎだよ!

とりあえず、真相を確かめるべく携帯電話を手に、池袋の街を歩いた。



最終的に辿り着いた家が、新羅の家。
色々情報を探りに探って聞き出した結果、ここにシズちゃんがいるとの情報が。
新羅の家のインターホンを押しまくる。
そりゃあインターホンが壊れるんじゃないかってぐらい。

「誰!?……って、臨也?」
「やあ、新羅。シズちゃんがお世話になってるみたいだね」
「……静雄に会いにきたの?」

新羅は少し真剣な、それでいてどこか怪訝な様子で俺に問う。
何、シズちゃんに俺を会わせたくないわけ?
じゃあいいよ、無理にでも会ってやるんだから。

「いるんでしょ、ここに。早く出しなよ」
「今の静雄と、君を会わせることはできないね。……彼は今、」

人間不信、っていうか臨也不信、かな。
そうやっておどけたように言ってみせた新羅は、また怪訝な眼差しで俺を睨むように見つめた。
俺、不信?

「意味わかんない」
「だろうね。君は静雄に酷いことをした覚えがないのかもしれない。でも、流石の僕でもこれはやりすぎだと思うよ」
「は?何の事」

新羅の言っていることの意味がわからない。
俺がシズちゃんに酷いことをした?いつ?何を?
何もわからず一人混乱していると、新羅が目を丸くした。

「…まさか、本当に心当たりないの?」
「一体何のことについて言っているのか、俺にはさっぱりわからないよ」

怒ったように言うと、新羅は酷く慌てた顔になった。
そして急に俺を部屋の中へと招き入れる。

「何も知らないんだったら、君は今の静雄を見るべきだ」

そう言われて連れてこられたのは客間のような寝室。
ベッドに横たわっていたのは紛れもない、シズちゃん本人。
でも、どこか異様な雰囲気がして、そのベッドに近付いて確かめてみる。

「何、これ…」

シズちゃんの端整な顔には痣が大きく残り、頬には涙の痕がたくさん。
身体には、白い肌を強調するように無数の変色した痣と鬱血痕。
切られた部分はもう治癒して塞がりかけているものの、やはり痣が残るのは人間と一緒らしく。
変色してても痛くないとわかっていても、こんな痛々しい色の肌のシズちゃんなんか見たくなかった。

「昨日路地裏で気絶してたらしくてね、セルティが連れ帰ってきたんだよ。それで寝かせてたら、起きて。セルティが静雄を心配して傍に座ってたら急に泣きだしたらしいんだ。それで今は落ち着いて寝てる」

こんな惨劇になってるからてっきり君関係だったんだけど、って、俺をどんだけ外道に見てるの。
とにかく、目の前のシズちゃんの姿がありえないぐらいに現実味がない。
しかも俺以外の奴に強姦されるなんて……。
あー、なんか無性に苛々してきた。

「臨也、顔が怖いよ」
「……じゃあ新羅は黒バイクが暴漢に強姦されても許せるっていうんだ」
「それは何があったとしても許さないけど」

突然新羅の声も鋭くなって、本気のオーラが見えたような気がした。
それよりも目の前のシズちゃんだ。
シズちゃんを犯した奴らはどうしてくれよう。
突き止めて、海外にでも売り飛ばしてやろうかな。
うん、それがいい、そうしよう。
それにしても、どうしてシズちゃんは抵抗しなかったんだろう。
まさか、シズちゃん、ビッチなの・・・!?

「嗚呼、静雄の両腕とか身体の至るところから注射の痕が見つかったよ」

新羅が俺の考えていることを当てるかのように、サラリと事実を述べた。
きっと筋弛緩剤でも打たれたんだろう。
力入れようと思っても入らなかったんだ……可哀想に。

「本当に臨也が強姦したんじゃないの?」
「俺はここまでしないよ。使うんなら筋弛緩剤と媚薬と睡眠薬で十分。ここまで暴力振るったりしない」
「…そんなに多量の薬を一気に使うのもどうかと思うんだけどさ」

シズちゃんなら結構薬を投与しても大丈夫でしょ、と言いかけたが、口には出さずに終わった。
というか、したことあるし。

「とりあえずさ、出てってくれない?」
「……ここ僕の家なんだけど」

新羅は怪訝な視線をこちらに寄越す。
それからまぁいいじゃないと急かすように俺は言った。

「くれぐれも部屋を破壊したりしないでね」

新羅は苦笑しながら扉の向こうへ消えていった。




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