前を向いたシズちゃんの体にスポンジを押しつける。
力加減なしに洗っていくと、

「いた・・・っ」

という何とも可愛らしい声が前方から聞こえた。

「シズちゃん痛いの!?」

まさかシズちゃんがこんなので痛がるなんて思ってもみなかったから。
思わず声を上げて聞くと、静かな頷きが返ってきた。
痛みからか若干涙目になっているシズちゃんは、なんて可愛らしいんだろう!
ごめんね、と謝ると、別にいい、と少し照れた様子のシズちゃんがいた。

「今度は優しく洗ってあげるから」

そう言って首筋から腕、腕が終わったら胸、と優しくスポンジを滑らせていく。
否、意図的にシズちゃんが感じるように、とかじゃないからね。

「ん、ぁふ・・・・」

シズちゃんはぐっと唇を噛み締めて何かを我慢しているようだけど、俺にはそんなの手に取るようにわかる。
胸から腹筋へ、なぞるように洗うとシズちゃんの体が小さく震えた。
それから脇腹を悪戯にゆっくり洗うと、シズちゃんが身を捩って声を我慢してる。

「どーしたの、シズちゃん?」
「い、いざっ・・・やめ・・・」

涙目で必死に訴えるもんだからたまんないよ。
そのまま泡まみれのスポンジを握っていない方で脇腹を撫でると、シズちゃんが金を振り乱し嫌だと口にした。

「嫌じゃないくせに」

俺はそう吐き捨てて手を進めようとすると、不意に手首を掴まれた。
何事かと思いその手の主を見てみると、嫌だ嫌だと連呼していた。
・・・いつもと様子が違う。
いつもはここまで拒否したりしないのに。

「・・・シズちゃん?」
「お、おれっ・・・こういう、こと・・・あんまり、したくな・・・」
「えぇっ!?シズちゃん恋人とヤりたくないの!?」

思わず大声で聞いてしまった。
だって、恋人同士ですることなんて大抵決まってるようなもんだからさ。
シズちゃんが俺とセックスしたくないだなんて!
・・・ちょっとがっかりしたよ、俺。
何コレ、倦怠期?

「こ、こういうときは、ふつうにふろ、はいりたくて・・・」
「?ふつうに?」
「いつもいざやとふろはいったら、その・・・いざやがヤる、から・・・」

否、そりゃあシズちゃんと会える期間が限られて欲求不満だし、俺だってまだまだ健全な男子なわけであって。
こういう風呂場なんていう、人が裸で入る場所に二人で入ったりしたら我慢のリミッターなんか外れちゃうに決まってるよ。
って心の中だけで言っても意味ないから、口に出して言ってみよう。
そう思って口に出そうとしたら、シズちゃんの方が早くて。

「おれ、からだだけのかんけいとか、いやで・・・」
「はぁ!?」

この子は何を言い出すんだろう。
こんなに愛して愛してやまないシズちゃんと俺が身体だけの関係!?
そんなわけない。
確かにシズちゃんの身体はどこもかしこも可愛くて好きだけど、それは心がついてくるから成立する行為であって。
別にシズちゃんの身体目当て、謂わば性欲処理とかいう汚い関係ではない。

「あのねシズちゃん、セックスするから身体目当てとかいうことじゃなくて、俺はちゃんとシズちゃんに好き、って・・・」

・・・言ってない。
そういえば言ってなかった。
俺が路地裏で強姦しちゃって、情事中に好きだとか愛してるとか言ったからシズちゃんには聞こえてなかったんだった。

「すき、なんて・・・おまえ、いってない・・・」

シズちゃんは既に涙を目から溢していて、俺から完全に視線を外している。
駄目だ、これじゃあ本当に身体だけの関係で終わってしまう。
俺はシズちゃんの肩を思い切り掴んだ。




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