扉を開けて真っ先に視界に飛び込んできたのは、バスタブに口まで浸かって息をブクブクと吐き出しているシズちゃんの姿だった。
その可愛い姿に眩暈がした。
今思えばシズちゃんとお風呂に入るなんて、拷問以外の何でもないよ。
そんな俺の心境を知ってか知らずか、シズちゃんが上目遣いでこっちを見てきた。
そんなのどこで覚えたのさ。

「頭洗おっか」

ゆっくりと俺の言葉に頷いたシズちゃんは、またゆっくりと立ち上がった。
そのとき眩暈がしたのか、一瞬体がふらついたけど、すぐに壁に手をついて普通に立ち上がった。
恥ずかしいのか下半身にはちゃんとタオルが巻いてあった。
アレ、全裸で押し込めたはずなんだけど。
そしてバスタブから上がって。

「え?」

風呂に飾り程度に置いてある大きな鏡の前にちょこんと座った。
体育座りをして、まるで何かを待つように。
・・・これって頭洗えってことかな?
そうだよね、じゃあ遠慮なく洗わせて頂こう!

「じゃあシズちゃん目、瞑ってー」

そう言うと従順に目を瞑るシズちゃん。
あ、やっぱり洗ってほしかったってことでよかったんだね。
そのまま俺はシャワーの湯を出して、色素の薄い金を濡らしていく。
根元は色が黒く変わっていて、もうすぐ染めにいくのかなーなんて考えた。
シズちゃんは背が高いから体育座りをしても結構高くて、俺は中腰で頭を濡らしていた。

「じゃあシャンプーつけるよ」

手のひらにシャンプーを落として金に広げていく。
泡立てていくとシャンプー独特の甘ったるい香りがして、そういえばこのシャンプー、女に貰ったんだっけ。
それから泡を流していくと、シズちゃんが微笑んだ気がした。

「いざやの、におい・・・」

全部流した後に嬉しそうに言うもんだから、思わず襲いそうになった。
危ない危ない。

「じゃあ今度は体ね」

そう言った途端、シズちゃんは顔を真っ赤にさせて目を見開いた。
何度か瞬きをさせて、俺が手に持っていたスポンジを奪い取った。

「・・・ボディソープ、どこだよ」

あ、流石に体は自分で洗うって?
でもここまで洗ってあげてた俺にそれはないんじゃない?
俺はシズちゃんからスポンジを取り返して、何種類かあるボトルからボディソープをそれに落とした。
また泡立てていく。

「洗ってあげるね、体」

出来るだけ微笑みながら言うと、シズちゃんは顔を真っ赤にさせながらも頷いた。
いつもだったらここで物が飛んでくるのに!
お酒の威力は多大だと思った。

「シズちゃん背中向けて」

まずは背中から洗っていく。
シズちゃんの背中は真っ白で傷一つなかった。
その綺麗な背中にスポンジを滑らせて、泡を塗りつけていく。

「ん、」

シズちゃんは両手を床につけて、さっきの体育座りとは違って足を蛙のように広げていた。
まぁペタン座り・・・みたいな?
それで猫背になっているから背中が洗いやすい。

「じゃ、前向いて」
「……まえはじぶんであらえる」
「俺が洗いたいの。だから前向いて?」

ちょっと甘えた声で言うと、シズちゃんは羞恥に染まった顔で頷いて前を向いた。




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