「……ん」

夢から意識が覚醒する。何だか変な夢を見たような気がした。
目を擦って視界をクリアにさせると、目の前に信じられない物体がある。
…マントと王冠と、馬?

「初めまして、私日々也と申します。以後お見知り置きを」

馬から颯爽と降り立って、右手を取られその甲にキスをされる。
あれ、これは見たことのあるような。
顔がよく見えなくて、キスした手から上がってくるその表情を見つめた。その顔は。

「ま、マスター?」
「いいえ、日々也です」

マスターや兄さんと同じ顔。そっくりな顔。
その似すぎた端整な顔立ちに、少し違和感を覚えた。
あ、そうだ。思い出した。俺はこいつに夢の中で会ったんだ。
黒く淀んだ世界に、キラキラ輝いたこいつが現れて、夢の中で俺に手を差し伸べた。
その手を、あまりに輝きすぎていたこいつの手を、縋るように握ってしまった。
あくまでも夢の中の世界だとばかり過信していたのだけれど。まさか現実世界に起こってしまうなんて。

「私は貴女を迎えに来たのです、姫君」
「ちょ、ちょっと待て、姫君とか言うなきめえ!つーかお前、お前何なんだよ!」
「私は日々也。デリック様、貴女を迎えに来ました」

添えられた手を引き抜いて、布団の中にうずくまる。
何で、何で。何で俺の名前を知っている。何で俺のところに来た。
わからないことがありすぎて頭がぐちゃぐちゃになりそうだった。
こんなに一気に大量の情報を受け入れたのは初めてで、回線が混乱している。
果てしなく意味のわからない状況に悩み続けていると、電子の外からお呼びがかかった。どうやらマスターらしい。
そうだ、マスターなら何か知っているはず。
すぐさま布団から出て、馬と馬に乗った絵本に描いたような格好をしている男を電子の外へと引っ張り出した。



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