疎外感は感じていた。


マスターと呼ばれる男には金髪の、自分と同じ顔をした男が傍にいる。名前は静雄というらしい。
兄と慕っている男にも金髪の、これまた自分と同じ顔をした男が傍にいる。名前は津軽というらしい。
皆、皆傍に誰かいるのに。いつもそう思うと寂しくて居た堪れなくなった。
けれど、皆自分には優しく接してくれて、いつも周りに誰かがいる。
だから夜はいつも寂しく感じるんだ。毎夜毎夜、袖が濡れていた。

誰か、誰でもいいから俺の傍にいてくれる、かけがえのない大切な人がいればどれだけ心地良かったか。
電子の海でつくられたベッドに横たわる。布団の冷たさを感じて、鼻の奥がつんと痛んだ。
こんな日は眠ってしまうのが一番だと。そう覚えたのはこうなって2日目の夜からだった。

周りからはよく冷めていると言われる。
それはサイケがちょっかいをかけてきたのに対してそっけなく返したりだとか、静雄がプリンを食べさせてくれたのに対してお礼を言えなかったりだとか、そういうことからだと思う。
冷めていると言われるのは仕方ない事で、自分自身でも何とかしなければと思っている。
でも、意図的にやっている部分もあるのかもしれない。
ひょっとしたら自分でも気付かない内に無意識に、こいつらにはそれぞれ相手がいるから俺が邪魔しない方がいい、と思って冷たく当たっているのかもしれない。
そんな自分が嫌なんだ。好意には好意で応えたい。
けれど変な気遣いからか、冷めていると思われ迷惑に思われている。
何とか解決策はないのか。寝がえりを打つとパサリ、と髪が音を立てた。

「もし……」

もし、俺にも大切な人ができたら。
笑顔で応えられるかもしれない。言葉だって優しくなるのかもしれない。
布団を思い切り抱きしめて、妄想に浸ってみた。
そうなるとすればどんな奴がいいんだろう。マスターみたいな変態?否、静雄が可哀想だと常々思っているからそれは嫌だ。
じゃあサイケ兄さんみたいな無邪気で子供っぽい奴?否、そういう奴に限って腹が黒かったりする。
そうだな……もっと紳士的で、大人っぽくて、静雄と津軽を足したみたいな。

「…何考えてんだ俺は」

妄想に浸り過ぎた。マスターみたいで嫌だ。
もう眠った方がいいだろう。布団を抱き締めて深い微睡みに落ちた。
その夜は何だか現実味のある夢を見た。



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