※来神



「静雄、貧乏ゆすりしてる」

ごく普通の休み時間、俺は普通に椅子に座って机に頬杖をついていた。
つもりだったんだが、どうやら貧乏ゆすりをしていたらしい。
向かい側に座る新羅に指摘された。

「静雄が貧乏ゆすりをすると机がガタガタ揺れるからわかりやすいよ」

・・・それはどういう意味で捉えたらいいのか。
あまり気にしないでおこうと思って席を立った。

「どこ行くの」
「屋上」
「臨也がいるかもしれないよ」
「……さすがにいねぇだろ」

臨也、という単語が出て危うくキレそうになったが、何とか抑えた。
俺はいつもそうだ。
アイツが絡むと、周り関係無しに喧嘩をふっかけてしまう。
もう癖になってしまっているから厄介だ。

屋上へと続く扉を開ける。
辺りを見回しても……誰もいない。
新羅のいうことを信じなくてよかった。
フェンスに両腕を預けて空を見る。
青く透き通った空を見上げて、暫くまどろむことにした。

「・・・ぁ」

屋上の、丁度死角になっている影から、女の声が聞こえた。
それも甘ったるい、媚びたような。
ああ、こんなとこで盛ってんのか。
高校生ってもんは元気だな、と、他人事のように考えていた。

「・・・うん、そう」

ふと、聞き慣れた声がした。
聞き慣れ過ぎた、あのウザったい声。
嘘だ、そう思って心の中で否定してみるも、その声はアイツの声にしか聞こえなくて。
そっと、死角になっている場所を覗いてみた。

「うん、そこ」
「あ、は・・・ここっ?」

女の甘ったるい声と、痴態と、アイツの熱を帯びた声。
こんなの見たくなかった、嘘だと信じたかった。
でも、目の前に広がっているそれはあまりにも現実的で残酷で。
音を立てないように、そっと逃げた。
屋上の扉を閉めてからは、記憶がない。
気付いたら道路の真ん中で、標識を持って、周りに人が何人も倒れていた。



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