「かくれんぼしよ?」
「ハァ?」

池袋でいきなりノミ蟲に対峙したかと思えば、唐突な言葉。
かくれんぼ、ってあのかくれんぼか?
などと思考を彷徨わせていたら臨也がにんまりと笑って話を続けた。

「ふと思ったんだよね。俺を見つけるのが大得意なシズちゃんは、俺がどこにいても池袋内なら簡単に見つけられるのかな?って」
「それは手前が臭ぇからだ」

べらべらと喋り出す臨也を余所に俺は近くにある標識をぎりっと握りしめる。
かくれんぼなんざやるわけねぇ。内心で悪態を吐いて、臨也を睨んだ。

「乗り気じゃないらしいね。じゃあこんな条件を提示してあげるよ!シズちゃんが俺を見つけ出せたら俺はシズちゃんの言う事をなーんでも聞いてあげる。但し、見つけなれなかったら……わかってるよねぇ?これで満足でしょ?」
「っ……!」

にやり、と口許を歪ませて笑う臨也に、俺は逆らえそうになかった。
俺にとって最高の条件が提示されたからだ。ただ、見つけられなかった場合のことを想定すると、俺自身どうなるかわからない。
否、見つければいいだけの話だ。いつもいつも臨也のことを見つけられているんだし、また匂いを元に探せばいいだけだ。
かくれんぼは隠れたらその場にずっといなければいけないわけだし、そうとなればこっちのものだ。
こんな条件を提示してきた臨也は馬鹿だ、と内心でほくそ笑む。

「いいぜ、やってやるよ」
「やっと乗ってくれたね。制限時間は3時間。じゃあ30分待ってて。俺はその間に隠れるから。スタートっ!」

そう言うと臨也は凄まじいスピードで人混みを駆けて行った。
俺は時計を見て、30分までの時間を計る。今が4時だから……4時半か。
どこかで暇を潰そうかとも思ったけど、確か鬼は動いちゃいけないんだったっけ……。
そんなルールを思い出して、適当に電柱に凭れかかって待つことにした。
オレンジ色に染まった空を見つめながら煙草を取り出す。空を見てると、アイツのことなんか忘れそうだ。
暫くぼーっとしていると、もう5時がきていた。30分のロスタイム。
早く探しに行こう。煙草をそこら辺の灰皿に押し付けて、俺は歩みを進めた。



続きます

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