「シズちゃん、好きだ!愛してる!」
「うっせぇ、黙れ!死ね、ノミ蟲いいいい!」
「……はぁ」

僕はどうしていつもこの二人に巻き込まれるんだろう。
今僕の目の前で繰り広げられているのは喧嘩。只、ここは僕の家だから標識とか自動販売機とかはないんだけど、あったら必ず吹っ飛んでいるだろう。
この二人は犬猿の仲、と謳われているのだが、実は全然そうじゃなくて逆にバカップル同然。
臨也の方はさっきから愛を叫んでいてうるさいし、静雄も静雄でその言葉に怒りながらも顔を真っ赤にさせている。
僕はセルティとイチャイチャしたいのに、どうして他人がイチャついてるところを見なきゃいけなんだろう!
でもこの二人まだくっついてないんだよね、勿体ないなぁ。
そうは思っているけど口に出さないのが僕。だって僕は傍観者だからね。

「あはは!シズちゃん顔真っ赤だよ?」
「っ!うるせぇっ!殺す、絶対ぇ殺す!」
「はは!戯言をほざかないでよ!俺を殺す?殺せるわけないじゃん!」

あーもう、話が物騒な方に向かっていってるし。
本当、どうしてこうなったんだろう。あ、そうか。この二人が鉢合わせしたのがいけないんだ。
僕の家に臨也を呼びだして色々と仕事の話をするはずだったのに、何故か静雄が来てセルティに用事があるとか言って家に上がり込んだ。
そしてそのときちょうど臨也が家に来た。
っていうか臨也絶対タイミング図ったでしょ。静雄が来たときに丁度入って来たでしょ、絶対。
それで今に至る。
とりあえず静雄に気を静めてもらうために、冷蔵庫に入ってたプリンを出してきた。

「はい、静雄」
「おう、サンキュー」
「ちょっと新羅。何抜け駆けしてんの、っていうかシズちゃんに餌付けしないでよ」

いや、餌付けしてないし。っていうか抜け駆けもしてないし。
何か忘れてないかな?僕はセルティしか愛してないんだよ!
そう抗議するタイミングも逃し、臨也は機嫌を損ねて家から出て行った。
静雄はプリンを食べながらも臨也の背を見つめて、バタンと音がすると共にまたプリンに視線を戻す。
その顔はまるで飼い主に捨てられた犬のようで。

「静雄って臨也のこと好きなんでしょ?いい加減素直になれば?」
「…………」

黙ってプリンを食べ続ける静雄に言っても、静雄はまだ黙ったまま。
悲しげに細められた目は、今にも泣き出しそうだった。
静雄は素直になりづらい、というかなれないところがある。
そりゃあ信頼しきってる相手や、親しい友人などには素直に対応している。現に僕にはそこまでキツく当たらない。
でも、臨也みたいに静雄の機嫌を逆なでするような奴には素直になれないんだと思う。
静雄は不器用で、素直だから。だからいつも臨也に対してキツく当たってしまい、いつもこんな風にどんよりして後悔している。
僕も、そろそろ傍観者に飽きてきた頃だ。
というか、家が破壊されそうになるのが怖いから早くくっついてほしい。

「今更……」

ぼそり、と静雄が何かを呟く。

「今更、素直になんか、なれるわけねぇだろ……」

その声は掠れていて、今にも泣き出しそうな声だった。
つまりは8年にわたる関係の中で、今まで自分が封じ込めてきた気持ちを表に出して、現状を変えることが怖い、と。
本当、不器用だよね。だから臨也が扉の外で聞き耳たててたわけか。

「ってことだから臨也、静雄は君のことが好きらしいよ」
「え?」

扉の方を向くと、勝手に扉が開いて外にいたのは顔を赤くさせた臨也だった。
やっぱり聞いてたんだ。盗み聞きはよくない趣味だよ、全く。

「さすが新羅、最初から気付いてた?」
「臨也が出ていっても気配が消えてなかったからわかっただけだよ」

やれやれ、と肩を竦めて笑う臨也に、こっちがやれやれだ、と言いたくなる。
静雄の方を見ると、顔を真っ赤にさせて口許に手をあてて臨也の方をじっと見つめていた。
さて、僕は出て行った方がいいかな!
臨也に終わったらメールして、とメールを打って送信。そして僕はセルティを探すために家を出た。
後日、静雄が嬉しそうに左手の薬指にはまった指輪を見つめていたのはまた別の話。


今更素直になれる訳ない
(素直になれなくても恋は実ります)




新羅さん完全なるキューピット役w
シズちゃんが最後にはめてる指輪は折原の指輪ですね^q^
このネタ好きなんです、臨也の指輪をシズちゃんにはめさせるの!!
もういっそのこと折原静雄になっちゃえよ!!←

っていうかタイトルと全然マッチしてない、何だこれ。


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