カーズ様と吸血(荒木荘)




「ッ!」

ビリッ、と突き刺す痛みに、思わず息が漏れる。その痛みを紛らわすように、優しく背を撫でる手。

「痛いか」

「ん……でも、平気」

ぎゅ、とその首に縋り付くように抱きしめる。

「……続けるぞ」

「うん」

ねっとりと、彼の舌が這った跡に唾液がまとわりつく。くすぐったくて思わず笑ってしまうと、またさっきの痛みがやって来た。

「ぅ……」

「いい加減慣れたらどうなのだ」

「だ、だって痛いものは痛いの」

「我慢しろ」

やめるという選択肢はハナから存在せず、一方的な痛めつけに耐える他はない。しかし、口から溢れる言葉とは裏腹に、優しい手。痛みに伴う僅かな快感も、この行為に抵抗しない理由。

グチッ。犬歯が突き刺さったところから、ズキズキと痛みを発しながら緋色の液体が流れ出していく。だが裂かれたところを舐められると、不思議と痛みは消えていった。一体どういう仕組みなのか。

彼は口に溜めた私の血をゴクリ、と飲み下すと、満足げに頭を撫でてきた。




「会話だけ聞いてるとエロゲなんだよなァ……」

もぞもぞとこたつから頭を出したディアボロが、ぼそっと呟いた。





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