二人の馴れ初め編 #2



夕食を食べ、夜も深まってきた頃。
どこかに行ってしまったディエゴを探して家中を歩き回る。といってもドアが開いている部屋にしか入れないからかなり限られるのだけれど。


「ディエゴ〜?」


他は全て探したからここだろう!と寝室をドアの隙間から部屋を覗き込むと、案の定ディエゴがベッドの上で寝そべっていた。
そういえばうちに来てから一度もお風呂に入れていないなァーと思ったのが事の始まりである。一度くらい洗わないと汚そうだし、そろそろ夜なので私もついでに入ろう!ということでディエゴのお風呂作戦を決行している。
そろりと近付くと、閉じていた目をパチリと開きこちらを見上げた。今まで寝ていたのだろう、少しぼんやりしている。
恐竜相手に恥ずかしがることもないので単刀直入に言う。


「お風呂入りたくない?」
「……」


黙ったままこちらを見上げる。悩んでいるのか、10秒ほど固まった後こてん、と仰向けになった。寝ぼけてるのか、いつもより可愛さ100倍くらいに増えている。かわいい。


「まあ嫌って言っても連れて行くんだけどね」


ディエゴをひょいと抱き上げる。あら、あんまり暴れない。両手で抱えるようにしたが、少し身じろぎするだけで蹴ってこない。……少し心の距離が近づいた気がする。感動。

背中を撫でながら脱衣所に到着。お風呂は既に沸かしているので入るだけ!我ながら準備がいい。
ディエゴを床に降ろしもそもそと服を脱いでいると目が合った。なぜか蹴られた。


「そういえばディエゴって女の子?」
「グァアッ」
「あ、そうなの」


否定するような声色からして男の子らしい。
髪を結んでいるとディエゴは先に浴室に行ってしまった。後を追うように入る。……恐竜ってどのくらいの温度が適温なんだろう。よく分からないのでぬるめのシャワーをかける。


「どう?気持ちいい?」


聞くと、ディエゴは尻尾をパタパタと動かした。多分YESって言ってる。


「なら良かった」


ディエゴに容赦なくボディーソープを塗りたくり、少し灰色混じりの泡でもこもこになったところを洗い流す。こびりついていた泥も綺麗に流れ落ちた。身体を撫でる手が気持ちいいのか、両目を閉じてじっとしている。


「あ〜ほんとディエゴっていい子だね。昔飼ってた猫なんて洗おうとしたら大暴れするわ怪我するわで大変だったのに」


ディエゴを洗い終わったので自分の体もさっさと洗ってしまう。
ザブン!とお湯に浸かると、ディエゴも入りたいのか淵に乗って湯船の中を覗いている。小さいから足つかなそうだな、ということでディエゴを抱き上げて私のお腹の上に乗せる。ちょっとくすぐったい。


「大丈夫?熱くない?」

ぺちぺち。

「そうか〜ならいいや」


ぼーっとしているとディエゴがこちらを見つめていた。なんだ?と見つめ返していると、私の胸の上に顎を乗せてきた。なんだこいつぅ〜とか考えていたら上目遣いのコンボ技がッ!なんだこのかわいい生き物はッ!思わず抱きしめると「クァッ」と短く鳴いた。





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