二人の出会い編 #3



がつがつと焼肉を食べる恐竜を見つめる。もちろんタレ無しである。私は私で焼肉を白ご飯で頂いている。おいしい。
食べながら観察していて気づいたが、皿が大きいから手なんかが油でベトベトになってしまうかなァ、と思ってたのに、ちゃんと汚れないように食べている。この恐竜は本能以外の、例えるなら『知性』とか、そんなもので動いてるように感じる。頭が悪かったら汚れなど気にしないはずだ。
恐竜は頭が良いのか?でもTレックスはでかい割に脳みそが小さいと本か何かで読んだことがあるから、そんなことはない…はず。もしくは、恐竜でもラプトルという種類は脳みそが大きいのか。しかし、現存していないので全て推測の内。確証がない。もし知能がヒトでいう4歳児くらいあれば、しつけが非常に楽になりそうだ。


「恐竜さん」


尻尾をふい、と揺らした。……それだけか!こっちを向けいッ!


「どのくらい頭が良いの?しつけって必要ある?」


口の中にある肉を飲み込んだところでやっと顔だけこっちを向いた。そしてガン見される。


「もしかして――」


私の言葉が理解できてる?

なんとなくそうだったら良いな、程度で言った言葉に恐竜は、少し間を置いてコクリと頷いた。なるほど、それなら説明付く……ん?


「えっマジでェ!?」


思わず身を乗り出した私に対し、同じ事を2回も言わせるな、という意思でか、無視してまた肉を食べ始めた。
いきなりテンションが上がってきた。言葉が分かる生き物と仲良くなることが昔からの夢だったのだ。某ポケットに入るモンスターみたいな。
そうと分かった途端に愛着が湧いてきた。あんな粗末な扱いされたのに。そう、私は単純である。


「言葉が分かるなら大分楽になるよ。欲しい物とかしてもらいたい事とかあったら私に言…あっ喋れないんだったね。じゃあ、…えーと…どうにかして伝えて!」


言い終わるとフンッと鼻で笑われた。そんな変なこと言ってないのに!



・・・



「そういえばさ、恐竜さんってトイレとかどうするの?できるなら私と同じの使ってほしいんだけど……掃除の手間省けて楽だし」
「クァ」


デシデシと私の脛に頭突きしてくる。そして、きょろきょろと家の中を見回す。あぁ、トイレに案内しろってことね。


「こっちだよ」


案内しようとすると、私が向いた方向にあると判断したのかすぐに行ってしまった。後を追うように歩くと、ドアの前でぴょんぴょんしている尻尾が見えた。開けられないんだね。私が開けてやると、すぐにトイレに入っていった。


「えっと、使えるか分からないけど一応説明しようか」


恐竜さんは便座に乗っかりしげしげとトイレの中を観察している。当然ながら、使ったことが無いのだろう。


「見て分かると思うけど、排泄するのはここの中。この銀色のやつを下に押すと水で流れる」


試しに水を流してみる。ぐるぐると渦巻いて流れる水を見つめる。


「これはトイレットペーパーっていって、汚れを拭き取るのに使うんだけど、恐竜さんには必要なさそうだね」


そんな短い手じゃあ使えないだろうし!……なんて言ったら噛まれそうなので心の内に留めておく。


「ああそうだ、横に付いてるボタンを押すと下から水が出てくるから気をつけてね、間違って押すと水浸しになっちゃうから。もし押してしまったらこのピンクのボタンを押せば止まるよ」


説明はこんなもんかな。…あ、それ以前の問題があった。


「恐竜さんってドア開け閉めできる?」


動体視力って止まってると見えないんじゃあなかったかな。あれ、でも……


「……」
「あの、もしかして、止まっててもちゃんと見える……?」
「クァ」


コクリと頷いた。だからトイレの便座に乗れたのか。ボタンとかの説明も普通に聞いていた。こんなところで判明するとは思わなかった。


「じゃあ、ドアはいつも半開きにしておく。それならドア開け閉めできなくても大丈夫でしょう」


つくづく思うけど、私の適応力すごいな。恐竜さんもだけど。




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