二人の(非)日常編2 #11



働かずあまり外に出ない私は、とにかく時間があり余る。暇つぶしに、いつか買った小説を読んでいた。

ドッドッドッ……ディエゴの足音が家の中に響く。すっかり体重も重くなったなァ。にしても走るなんて珍しい。本から顔を上げ、音の方を向く。するとすぐに聞こえなくなったと思ったら、部屋のドアが勢いよく開いた。そのまま一直線に向かってくる。

急いで読んでいた頁に栞を挟み、机に置く。いつもよりテンション高いな。


「どうしたの?」
「グァルル」
「……?」


ディエゴは手をしきりに動かし、何かをアピールしている。…手がどうかしたのかな。怪我した訳じゃあなさそうだけど。


「手が何かした?」
「グゥ」


そう言うと、ディエゴはコクン、と頷いた。しかし何が言いたいのか分からない。もどかしい。

意図が分からず、とにかく手をじっと見つめていると、ディエゴの手が、ゆっくり、おかしくなった。3本だったはずの指が増えたのだ!目をゴシゴシとこすっても、その光景は変わらない。…この形、見覚えがある。私が毎日、よく見ている形。

人の手だ。まだ骨格からしかそれらしさを感じられないけれど。つまり、スタンドの制御ができるようになってきたと!


「ディエゴッ」
「グルル」
「……!」


手を見ていて気付かなかったが、体全体もほんのちょっぴり人型に近付いていた。まだ完全に制御できるってほどではなさそうだけれど、ディエゴだからすぐに使いこなせるだろう。前世と同じスタンドのようだし、きっとコツを思い出したらあっという間だ。

嬉しくて頭を撫でたら、気が抜けたのか元の姿に戻ってしまった。3本指になった手を見て、握っては開きを繰り返している。

様子からして、完全に人か、あるいは恐竜でないとならないらしい。いつも私もディエゴも寝ている間に姿が変わっているから、無意識下ではどうにかなっているようだけど……。意識すると難しいとか、そういうやつ?

ディエゴは私への報告が済んだので、制御の練習をするのか洗面所の方へと走っていった。


自分も最初の頃は制御が難しかったことを思い出して、しみじみと腕を眺めた。……そういえば、私のスタンドはずっと腕だけと認識していたけれど…身体もあったりするのかな?





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