二人の(非)日常編2 #10



「……ふぁあ……」


暖かな布団の心地が、私を捕らえて離さない。まだ出たくないな……。隣で寝ているであろうディエゴを抱き枕にしようと、手で周りを探し回る。…背中側にすべすべした物体を発見!ディエゴだ。邪魔な布団をかき分けつつ抱きしめる。

そうだ、今度買い物に行ったら、恐竜のパーカーを買ってきてあげよう。似合いそうだ。まぁ何着ても似合うけど……。ディエゴが来てから恐竜が好きになったよ。恐竜かわいい。この鱗の肌触りとか、最高だね…… ……?


「鱗…?」


磁石のようにくっついていたはずの瞼が一瞬で離れていった。手に触れる感触が人間じゃあない。見ると腕の中には恐竜が……いつの間に、戻ったのか。通りで私のお腹に当たる爪が食い込むはずだ。爪が当たらないようにしてそっと抱きしめたら、伝わる温度が暖かかった。ディエゴは少し身じろぎしたものの、まだ夢の中。

ぐちゃぐちゃになった布団を適当に直し、二度寝の姿勢に入る。時計の短針は、6の近くを指し示していた。まだまだ寝れるな…。

















頬に当たる何かの感触に、深く沈み込もうとしていた意識が浮上する。ゆっくりと目を開けると、目の前に広がる鱗の大群。遠くなったり近くなったり。顔に当たっていたのはしっぽだったようだ。振っているせいでぺちぺちと当たってくる。…布団に頭突っ込んでなにしてるんだろう。

そっと手を伸ばし、背中をひと撫でする。突然のことに驚いたのか、尻尾の動きが止まった。そして次の瞬間、掛け布団が宙に舞い上がった!

パサリと着地する布団。ディエゴは何もなかったかのように、きょとんとした顔でこちらを見ている。手を近づけてみると、ぺろりと舐められた。ちょっと暖かかった。


「おはよう」
「クゥ」
「ご飯食べようか」


バキボキと音を立てながら大きく伸びをすると、ディエゴも真似をして伸びをした。ちょっと猫に似てた。









簡単に作った朝食を摂った。そして、これからこの間買ってきたごま蜜団子を食す!美味しいんだなこれが。ひと口めを前歯で噛むと中のごまが吹き出てしまうから、奥歯で噛むのが食べるポイント。

手元を見られつつ、袋を開けてひとつ口に放り込む。…おいしい!ディエゴは切れ口からクンクンと匂いを嗅いでいる。ひとつあげよう。


「奥歯で噛まないと中身出ちゃうから気をつけてね」
「ク」


この時点で、私はひとつのミスをしていた!それに気付かず、その大きな口に団子を投下する。パクッ。


「……わッ!」
「……」


ブッチュウン!ディエゴの口の裂け具合をすっかり忘れていたのである。例え奥歯で噛んだとしても、この口では吹き出すことに変わりはないのだ!ディエゴは分かってやったようで、床にまみれたごまをしげしげと観察した後、自分でもうひとつ取り出して食べ始めた。…今度は吹き出ない。噛まずに舌で潰したのかな。器用だなァ。

ティッシュを数枚取り、溢れたごまを拭き取る。あんまり多くなくてよかった。8個入りを買ったから、残りの4個はまた今度食べよう。黒く染まったティッシュを捨て、団子を1個口に放り込んでから、残りを冷蔵庫にしまう。一気に食べたら勿体無いし。……うん、おいしい。


「美味しかった?」
「クァ」
「それはよかった」


ディエゴの口元に付いた、真っ黒ごま達を拭き取る。ベトベトしているから水で洗った方が良さそうだ。






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