二人の(非)日常編2 #8



夕食を食べ終え、テレビを見たりとのんびり過ごしていたら、お風呂の時間が近づいてきた。早いところディエゴの髪を洗ってしまいたいなァ。折角の綺麗な髪が傷んでいるなんてもったいない。


「ディエゴ、お風呂入ろう」
「……」
「ん?」


風呂に入るよう促すが、ディエゴはこっちを見たまま無言で立っている。いつもならすぐ来るのに。


「どうしたの?」
「……」
「えーっと…ディエゴの髪洗いたいんだけど…」


そう言うと、10秒ほど固まってから、やっと動き出した。今の間はなんだったんだ?取り敢えず、ディエゴの手を取りお風呂場へと歩き出す。






「これがシャンプー。汚れを洗い流すやつで、最初に使います」
「しゃんぷー」


ボトルを持ち上げながら、中身の説明をする。よく分からないぬるぬるしたものを頭に塗りたくられるのは不快だろうから、なんとなく分かる程度に教えていく。


「こっちはトリートメント。髪を内側から…えっと、補修?…するやつ。シャンプーの次に使います」
「とりーとめんと」


あまり細かいことは考えずに使っていたから、ちょっと言い淀んでしまった。…チューブ型だから、他と間違うことはないだろう。


「そしてこれがコンディショナー。髪を保護するやつ。最後に使います」
「こんでぃしょなー」


ディエゴの髪はちゃんとすればかなりさらさらになると思う。


「えーと……目をつむってる時は、ボトルの横にぼこぼこがあるかで判断してね。ぼこぼこしてたらシャンプー、なかったらコンディショナー」


ボトルを手渡すと、ぼこぼこの具合を触って確かめていた。

粗方の説明が終わったので、風呂イスに座ったディエゴの後ろで膝立ちになり、しっとり濡れた髪にシャンプーをつけ、わしゃわしゃと泡立てる。金色、綺麗だなァ。羨ましい。鏡に映ったディエゴを見ると、目を閉じて気持ちよさそうにしていた。わしゃわしゃ。顔にお湯が掛かってもすぐ拭えるようにタオルを持たせてある。


「上向いて〜」


顔に水が掛からないよう、上を向かせてからシャワーで洗い流す。泡がどんどん流れ落ちていく。ぼたぼた、じゃぶじゃぶ。手につく感じがなくなるまで、流す。

同じことをもう一度繰り返した後、トリートメント。さらさらへの道はあと少しだ。マッサージしつつ馴染ませるように手で梳く。毛先全体に行き渡るように。

数分ほど無駄に指で梳いてから洗い流す。髪の通りがさっきより格段に良くなった。残らないようしっかり洗い流す。それが終わると、ディエゴは確かめるように、髪をぺたぺた触っていた。

仕上げにコンディショナー。べたべたと塗りたくってから洗い流す。頭皮に残らないように気をつけて。今更だけど、ディエゴはオールバックでもかわいい。


「これで終わり。……順番覚えた?」
「うー……んー」


微妙な反応。というか眠そう。大丈夫か。



ざっぷん。ほかほかの湯船に浸かった。恐竜の時は私のお腹に乗っていたけど、今は降りてもらっている。

ディエゴの頭はタオルを巻いてターバンみたいにした。何してもかわいいなんて卑怯。


「そうだ、お風呂上がったらディエゴも歯磨きしよう」
「んぅー……」
「(半分寝てる!)」


口を開けたまま船を漕いでいる。放っておいたら涎を垂らしそうだ。お風呂で寝たら溺れてしまうかも、なので結局私の上に乗せた。私の胸の上にディエゴの後頭部がくる感じ。ディエゴの肌すべすべ。…ショタコンじゃあない!


「……」


ディエゴはすやすやと眠っている。……のぼせる前には上がりたいな。






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